りんと

ラ・ラ・ランドのりんとのネタバレレビュー・内容・結末

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

『終わり良ければ総て良し』という言葉があるように、”エンディング”というものには、作品の印象を決定づける不思議な効果があるように感じます。

序~中盤が終始面白く、かつエンディングも良ければ満点ですが、そんな映画ってそんなにあるものでしょうか…?(笑)
仮に中盤までの印象が薄くても、エンディングの衝撃で、良くも悪くも『心に残る多く作品』に召し上げられる作品もあるでしょう。
例えば、”どんでん返し”という概念がまさにそうで、それまでのストーリーからはおよそ想像できないような展開が待っているが故に、印象深い作品として心に深く刻まれる作品が、多いのではないでしょうか?

私にとって『ラ・ラ・ランド』は、まさしくエンディングによってすべての印象が決まった作品です。

もちろん、序~中盤で描かれる、社会の荒波に揉まれながらも諦めず夢を追いかけるミアとセブの姿、そんなお互いに惹かれる日々を過ごし、夢を追うが故にすれ違う二人…という少女漫画のような展開も、歌唱やダンスシーンのカメラワーク、長回しの撮影手法、色彩の鮮やかさ、現実と空想を織り交ぜた演出…と計算されつくした演出で、目が離せませんでした。

ただ、正直言ってラストまでは、ストーリー自体は「割とありがちな展開」と感じていました。
いろいろ紆余曲折あったけど、二人は夢と恋愛を両立させてハッピーエンド、めでたしめでたし!で、「曲や演出は素晴らしいけど、話の内容は普通」という印象に着地するものと思っていたのですが…
エンディングで、直前に描かれていた"二人が夢を叶えて結婚生活を送る幸せな日常"が実は幻想で、現実ではお互いに夢を叶えるため、別れてそれぞれの道を歩んでいる、という展開になったとき、ここまでのストーリーに一気に深みが出たような感動を覚え、号泣してしまいました。

このエンディングによって、「ラ・ラ・ランド」は悲恋によるバッドエンド、と捉える方もいらっしゃいますが、私はそうは感じませんでした。
何故なら、作中でずっと描かれていた、二人が過ごした幸せな時間があったからこそ、ミアとセブはお互いの夢を叶えられたのだと思えたからです。
ミアがパリへ行って女優として成功する。セブはアメリカでジャズバーを持つ。二人がそれぞれの夢を叶えるには、別れという結論しかなかった。
ただ、そもそも二人が出会い同じ時間を過ごさなければ、夢への展望は無かった。
ミアもセブも、それがわかっているからこそ、二人はお互い声をかけず、ミアは去っていったのだと思います。

決してハッピーエンドではないかもしれませんが、切ない≠バッドエンド、を感じられた瞬間に、私の中でこの映画はとても印象深い作品となりました。
りんと

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