りんと

ジョーカーのりんとのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

ちょっと批判的な表現が多いので、気分を害された方がいたらすみません。

歴代バットマンの映画シリーズと、ところどころアニメ版バットマンを視聴のうえ、ゲームのアーカムシリーズをプレイしました。
満を辞してのジョーカー単独映画、楽しみにしていたのですが、ちょっと首を捻ってしまいました。

社会や環境、人間関係の理不尽に耐える一人の男が、苦しみ抜いた結果狂気に堕ちる、というストーリーそのものと、それを演じたホアキン・フェニックスの怪演は、本当に素晴らしかったと思います。

ただ、それを「ジョーカー誕生秘話」という看板を掲げて映像化して欲しくなかった、というのが観賞後の本音です。

歴代のジョーカーは、白骨死体に嬉々として話しかける、善人を悪人にするなど、常人にはおよそ思い至ることの無いようなクレイジーな思考と行動をするキャラとして描かれていたような印象でした。
同業の犯罪者さえも恐怖するような狂気。ゴッサムシティの悪意の塊。それこそがジョーカーというヴィランの最大の魅力であり、バットマンの永遠のライバルたらしめる所以だと思っていました。

しかし、今回のホアキン版ジョーカーには、歴代ほどの振り切った狂気をどうしても感じられなかったです。

もちろん、これまできちんと映像化されてこなかった、善人が悪人になるというバックボーンを描くとなれば、少なからず観る側が共感、同情する部分はあって然りだと思います。
それを差し引いても、今回のジョーカーはあまりにも優しすぎるというか、人間味がありすぎた気がしてなりません。

劇中で最もそれを感じたのが、マレーのトークショー前日にピエロ時代の同僚2人が家を訪ねてくるシーンです。
裏切ったランドルに怒って殺した後、ゲイリーには何もせず帰したところで「はぁ!?!?」と思いました。
苦しい時に唯一仲良くしてくれた同僚だったとしても、ヒース版ジョーカーだったらそのまま無事に帰したでしょうか?
この時点でジョーカーとしての自我を確立していたのであれば、例え恩人だろうが躊躇無く手にかけてほしかったです(逆に言えば、まだアーサーとしての心残りがあったとも捉えられますが…)。

そしてもう一つ、些細な描写ですが、ジョーカーに触発された民衆がブルースの両親を殺すシーン。これは絶対にやってほしくなかったです。
先述の通り、バットマンとジョーカーの関係は、正義と悪という簡単な枠に収まらず、複雑怪奇な縁であってほしいという個人的な願望を持っていました。
なので、ブルースの父トーマスがジョーカーに感化された市民に殺されることで、ジョーカーはバットマンにとっての両親の仇、というチープな構図を作ったことに、正直憤りさえ覚えました。

一方で、モヤモヤを晴らすために他の皆さんの意見を読んでいたところ、「最後のカウンセリングの部分以外は全てジョーカーのジョーク」という考察を拝見したのですが、これが一番腑に落ちました。
2時間近く語られたバックボーンが全て妄想で、真実はジョーカーの頭の中…というエンドだったとしたら、この映画自体が真偽不明として解釈できますし、それぞれのジョーカー像を崩さずにいられるので、これが一番無難な落とし所かなと。

映画そのものは傑作だと思いますが、ジョーカーというヴィランを描くにはとても中途半端な映画と感じましたので、星2とさせていただきます。
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