まぐ

ラ・ラ・ランドのまぐのネタバレレビュー・内容・結末

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

映画っていいな、って思わせてくれる映画っていいですね。

ありきたりというか、ストーリーに複雑さはなく、先にどんなことが起こるのかは大体予想できる脚本です。でも、そんなこともちろん監督は分かっていて、だからこそオープニングで物語の結末を語ってしまったのでしょう。初めから切ない終わりの見える恋の話。まさか開始2、3分で泣くとは思っていませんでした。音楽というのは、映像よりも短時間で人の心を揺さぶることができるのかもしれません。このシーンだけでなく、映画における音楽の重要性を嫌というほど感じさせられる映画です。

ストーリーはシンプルですが、その分周りの演出や音楽に気をつけられるので、自分はそのバランスが凄くいいなと思いました。バランスといえば、映画の中心テーマである恋と夢とのバランスも良かったです。主人公2人が恋しすぎず、夢見すぎず、どちらの描写も手を抜かれてなかったのが良かった。

見所は何と言ってもラストシーンです。セブとミアが結婚していたら、という世界軸の映像がこの上なく幸せな映像として流れるのですが、この監督さんは人の感動のツボを本当によく分かってると思いました。人は1人としか結婚できない。逆を言えば1人と結婚すると言うことは他のすべての人と歩む人生を切り捨てることなんですよね。もしもこの人と結婚していたら、なんて誰しも考えることで、でもそんなの実際上手くいかないこともわかってて。その答えのない胸のモヤが切ないという感情を生むんだと思います。ミアも最後にはセブと歩む未来の幻を断ち切るようにセブの店を出ました。セブにとってもミアにとっても、そして映画にとっても、それが1番いい終わりだったのではないでしょうか。
また、そのシーンの演出が本当に美しいです。先ほどストーリーの先が大体予想できると書きましたが、それとは裏腹に演出は驚きの連続です。機能的かつ美しい演出はこの映画の大きな魅力の1つだと思います。

ララランドという題も素晴らしいと思います。この夢と恋渦巻く、めくるめく映画を丸ごと1つのテーマパークとして名付けたようで。本当に感想としてはその通りで、ララランドを見に行った、というよりはララランドに行った、という感じです。どっぷり非現実的な美しさに浸った分、映画館を出る時に寂しくなるくらい。

恐らくもう一度見に行くことになると思います。2017年始まったばかりですが、もしかしたらもうこれ以上好きな映画には出会えないかもしれない、というくらい、最高の映画でした!




二度目の鑑賞。一度目とは違い、色々な批評を目にしてからの目線で。

この映画が刺さったのは、この映画が非常に狭い世界を描いており、それがどんぴしゃで自分と重ねられるからなのだなと改めて実感しました。
と言うのはこの映画、修行シーンも無ければセブの前の彼とミアが別れる描写もなく、「夢追い人の恋愛」という本筋以外の葛藤をほぼカットしているからなのだと思います。経験と想像で補える、もしくはそこを期待しない層でなければ、深く感動できないのかもしれないと思いました。

それは映画の中でも述べられており、描写としてはセブが舞台の成功を不安視するミアに他の観客なんかクソだというシーンや、レストランでBGMとなっているジャズにミアだけが反応を示すシーンなどがそれです。2人だけの狭い世界をとことん描きたいのだと思います。だからスクリーンの前にたったり、ヴァンヴィークの看板をへし折ったり、側から見たら迷惑な行動ですらロマンチックに描かれているのでしょう。もちろんそれが気になって映画に集中できないという意見や少なからぬ批判も理解できますが、ハマる人には深くハマる描き方だなと思いました。
まぐ

まぐ