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ラ・ラ・ランドのhiraginoのネタバレレビュー・内容・結末

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

色んな見方が出来る映画だと思うけど、私には、一貫して夢を追い、自分の行動の本質を忘れなかった女性と、一時は大切な夢を忘れてでも、愛に生きた不器用な男性のラブストーリーに思えた。

夢を叶えることがハッピーエンドなら、2人とも夢を叶えたこの映画は文句なしのハッピーエンドのはず。
なのに結末がほろ苦いのは、2人の愛が成就しなかったから。彼女が愛よりも夢を優先したから?
愛だけを見るなら、バッドエンド?

そういう意見も見た。だけど、本当にそうなのかな。
最後に見交わす視線にはお互いへの愛情と敬意、そして何より理解があった。

そもそも、先に夢を忘れたのはセブの方だ。
もちろん、それはミアのためだった。
とはいえ、夢は置いといて成功した俺と一緒に来ないか、なんて、一貫して夢を追う彼女にしてみたら、同志の裏切りみたいに感じたんじゃないか。
そのあと、くだらない(と少し前の彼なら怒ったに違いない)仕事のために彼女が全てを賭けた舞台をすっぽかしたときは、彼はいちばん大切だったはずの愛をも、夢と一緒に忘れてしまっていたんだと思う。

その後、(この間にセブは夢と愛を見失っていた自分に気づいたのだと思う)、セブにミアを見出したプロデューサーからの連絡が来て、セブがミアを導いて、彼女は夢を叶えた。

その5年後に場面が飛んだとき、女優としての地位を築いた彼女が知らない男と結婚していて子どももいるのを見たとき、ショックだった。
ミアが勝手にも見える。
あの昼間の天文台での愛の誓いは? セブへの愛を忘れたの? って。
やっぱり感情移入してるから、あの2人には一緒になってほしかった。

だけど、2人が一緒にならなかったことが、彼への愛を忘れたことになるのか。
答えはこの映画を見た人の数だけあるだろうけど、私の答えは、あの2人のそういう意味での「愛」はやっぱりあの舞台の夜に終わっていて、2人は人生のパートナーにはなれなかったんだ、ってこと。
どんなにお似合いの2人でも、そういうのは巡り合わせで、どうしようもない。
でも、2人がお互いにとって、共に夢を追い、お互いにいちばん大切なきっかけを与えた「同志」だったことは変わらないし、昼間の天文台で交わした、お互いをずっと愛しているという言葉も、そういう意味だったのだと思う。
(あれは愛の誓いでもテイのいい別れの言葉でもなくて、関係が変わったということだし、その関係はこの2人の人生の、映画には描かれない最後まで、変わらなかったと思うから。)

だけど、セブの店で、ミアの前でセブがピアノを弾いた間に流れる映像が、こうだったらよかった、こうなるべきだった2人の半生だったから、本当に本当に切なかったし(目が腫れるくらい泣いた)、でもそれが美しいのは、私たちの人生の、ひとつひとつの瞬間、ひとつひとつの選択が、取り返しのつかない(=かけがえのない)ものだと再確認させてくれたからだとも思うから、とにかくこの映画は美しく、色んな見方のできる良い映画だったし、私も夢と愛を諦めずに日々を生きていきたいと思った。
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