KouheiNakamura

暗殺教室 卒業編のKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

暗殺教室 卒業編(2016年製作の映画)
1.0
松井優征はロジックの作家だと思う。
彼のデビュー作「魔人探偵脳噛ネウロ」は推理漫画ではないが、徹底して計算され尽くされた漫画だった。最終巻まで読んで初めて気づく伏線や展開・構成の妙、キャラクターをきっちり描きこむことで面白さを形作る。独特の絵柄と時に毒々しい物語は中毒性が高かった。
続く「暗殺教室」では絵柄や物語の雰囲気をネウロからガラッと変えて、万人ウケする正しい意味での「少年漫画」を作り上げた。適度に驚かせる伏線やお得意のギャグセンスも楽しい快作になっていた。

そんな松井優征作品からロジックを抜くとどうなるのか?その答えが昨年公開された実写映画の続編「暗殺教室 卒業編」だ。
原作漫画の中から主人公の渚周りのエピソード中心にまとめられた物語はそれなりに作られて、破綻のないように見える。しかし、その実この映画の大半は退屈かつ冗長な原作の雑なダイジェストでしかない。更にそこに追い討ちをかけるのが、羽住英一郎監督お得意の間の悪い演出の数々。ギャグシーンではとにかく全てのタイミングが悪いせいで劇場内は静まり返り、ドラマ部分は謎のぐるぐる回るカメラワークと工夫のないアップの連続。
特に中盤の殺せんせーの回想場面は酷い。予算がなかったのか、やたらと狭い場所に感じる研究施設でのニノと桐谷美玲のだらだら芝居に付き合わされる。もちろんBGMは垂れ流し、時間経過は「あなたがここに来てから、もう一年になるんですね…。」の一言で説明。たったこれだけの演出で二人の絆・愛を感じろと言われても…無理。
またこの映画はメイン級のキャラクター以外のモブキャラには演出をつけていないのか、気の抜けたモブのセリフが散見される。特にクライマックス、ある人物が奇跡的に一命を取り留める場面での生徒役の「良かったー。」の気の抜けっぷりは凄い。必聴だ。
これ以外にも前編から引き続いて違和感しかないビッチ先生、烏丸先生の魅力のなさ。そういうタイプのアトラクションにしか見えないカエデの触手アクションと悪い意味での見所が満載。

前編はまだテンポを良くする努力が感じられたが、今回はとにかくだらだらと長い。後ろで見ていた子供は飽きたのか途中からポップコーンをバリバリ食べ始める始末。
この春一番のズッコケ映画、是非100円レンタルで。
KouheiNakamura

KouheiNakamura