のん

屍者の帝国ののんのレビュー・感想・評価

屍者の帝国(2015年製作の映画)
4.0
映画館で観る機会が単純に増えたからなのか、今年はアニメーションの鑑賞本数が多い。



『屍者の帝国』は夭逝の作家、伊藤計劃の長篇をアニメ化する一大プロジェクトの第一弾。


とは言うものの、本作は伊藤計劃が亡くなる直前に書いた数十ページのエピローグを円城塔が引き続いて完成させたため、伊藤計劃の作品というよりは円城氏の長篇と言うべきだろう。


21グラムの魂の在りかを巡るこの壮大な作品は、歴史に大胆にフィクションを交えた旅物語として展開されるが、個人的に原作は抽象的表現が映像としてイメージしにくく、非常に読み辛かった。


その点では映像で語れる本作は原作の補完という形でこれ以上なく綺麗にまとめられた見やすい作品である。


ただし、見やすいというのは小説を読んでる人限定であって、何の予備知識もなしにこの作品を観た人はおそらく難解さに頭を抱えるのではなかろうか。


映画は原作の、原作は映画の補完になっているという非常にややこしい作品。映画を鑑賞された方は併せて原作を読まれることをお勧めします。


ちなみにこれを皮切りに『ハーモニー』『虐殺器官』と伊藤計劃の長篇2本も公開が予定されているが、『虐殺器官』は制作スタジオが破産し、公開延期に。果たして…。
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