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猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)のTEPPEIのレビュー・感想・評価

4.6
6年に渡って完成したリブート3部作「猿の惑星」はこのWar for the Planet of Apes(邦題、マジでどうにかした方がいいです。日本最近酷すぎます)で素晴らしい3部作となったことを宣言したい。冗談抜きで冒頭15分で涙がこぼれ、終盤には溢れる作品となった。本来ならば前作以上にシリアスで救いようがないくらい猿たちの葛藤を見るのはまず無いと思っていたが、マット・リーヴス恐るべし。間違いなく今作がシリーズ最高と言わざるを得ない。このリブート作品は「なぜ猿が人類を支配したのか」というものと、「共存」と「文明の崩壊」をテーマにしている。第1作ではその根本的なテーマをスタイリッシュなスターターとして仕上げていたが、第2作では息が詰まるぐらいの人類と猿の確執と確固たる理念のぶつかり合いがしっかり描けており、こうして「戦争」は誰も望まぬまま始まってしまうというズシリと乗ってくる重みとともに幕を閉じた。それじゃあ、今回で戦争の全貌と猿の惑星の誕生が見るってだけなのねぇと思っていたら大間違いである。今作にはなぜ文明の崩壊が起きて、それを招くのは人間と猿のどちらなのかというバックグラウンドと共に、この上なく感情的な登場人物たちの末路を目撃する。まずは圧巻の映像。特に猿のCGは毛の色・毛並みまで素晴らしい技術で表現されておりマット・リーヴスの古典的な撮り方にも好感を持てる。前作のトーンを引き継いでいるなか、さらに新しい要素を混ぜている。それが猿の「キャラクター」という面白みである。猿の先導者であるシーザーのI do not start this war...から垣間見える猿の理不尽な死と、支配欲に塗れる人間の罪。元々は人の技術が招いた文明の崩壊をシーザーと他の猿を通して上手くまとめている。正直もう人間側で好感持てる奴なんて1人もいないほど畜生な野郎ばかりなためか、ところどころに張られたユーモアも重い緊張感と不快感の間に入って丁度いい。先ほど人間側はクズばっかりと言ったが、本作にて猿たちと行動を共にする少女ノバの存在が本当に素晴らしい。彼女にとって、アイデンティティがどちらなのかという本来ならば悩みそうな難題も猿たちとの触れ合いだけでわかる演出のレベルの高さ。この3作目は人間vs猿という単純な構成ではない。多くは語れないがこれは決して戦争だけを描いた映画ではなく、系譜である。美しい雪山と猿たちが持つ愛というものを堪能できる気軽な作品でもあるかもしれない。
ウディ・ハレルソンは正直勿体無いというかややミスキャストな気持ちもしたが、それは終始彼がタラハシーにしか見えなかった僕の責任でもあるだろう。いずれにせよハレルソンが演じるcolonelは鑑賞者に鞭を打つ存在だ。
総評として「猿の惑星」はこうしてひとまず完結だが、名作SFシリーズとしてこのリブート3部作は十分仲間入りを果たしている。迫力のあるアクションと、完璧なストーリーテリング、そしてその時代を反映させた一本である。マット・リーヴス監督の次作は「バットマン」…もはや前作、本作といい一流過ぎる監督だ。ベン・アフレック、喧嘩するなよ。
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