最初から30分、ほぼ台詞もなく、ゾンダーコマンドとしての生活が描かれる。
その短時間だけで彼らがいかにつらい、人として尊厳を捨てた作業・・・同胞を物として扱い、過酷な労働に従事しているのかをこちらに突き付けてくる。
ユダヤ人が人として扱われていなかった世界。
ビルケナウの収容所の過酷さは当時の数少ない資料からも知ることができます。
累々と積まれた死体の山、コマンドたちの片づける灰はかって息をし、同じ空の下脈打った人たちなのですから・・・
収容所の描き方も、夜と霧や収容所の日記等で読んだそのままであり、ガス室に収容者たちが送られた後のコマンドたちの作業には胸がつぶされそうになります。
サウルがなぜあのような所業に及んだのか、非常識とも取れるあの行動の意味・・・人としての尊厳を最後に保ちたいが故であったのでしょうね。
私たちが忘れてはならないのは、サウルの行為も、ナチスの行為も全て同じ「人間の行ったこと」ということなのですよね。
おそらく、自分が今まで観てきたホロコースト映画のうち、最も心を打ち、訴えかけてくる秀作でした。