風に立つライオン

グレン・ミラー物語の風に立つライオンのレビュー・感想・評価

グレン・ミラー物語(1954年製作の映画)
3.8
 1954年制作、アンソニー・マン監督、ヴァレンタイン・デイヴィス脚本による音楽映画の秀作である。

 自分でもビッグ・バンドに参加していることもあり、昔から何回となく鑑賞してきている。

 脚本のヴァレンタイン・デイヴィスは翌年に脚本は勿論、監督として「ベニイ・グッドマン物語」を手掛ける。
 私にとってこの2本はノスタルジックでウオーマーな同じトーンと味わいを持った音楽映画でこのジャンルに於ける飛車角と言っていい存在でもある。
 古き良き時代の捻りもないシンプルで一種クリスマスの夜に観る紙芝居の趣があるのかなと思ったりする。

 自分もかつてはLed ZeppelinやDeep Purple、Jeff BeckなどヘビーでハードなRockを好んで聴いてきたのに今ではこの2本の映画で奏でられている小気味と心地の良いSwing Jazzが大のお気に入りになっている。これも経年の為せる技かもしれない。 

 ところでグレン・ミラー楽団は1937年に結成されて以降、メンバーの新陳代謝を繰り返しながら現在でも活躍している息の長いビッグバンドでもある。
 ミラーは結成して7年後に従軍中に亡くなっているがこの7年間に綺羅星の如くのあの名曲群を生み出しているし、その彼の目指したメローで踊りだしたくなる様なあのサウンドは現在でも生き続けている。
 アメリカ人も時代、年代を超えて受け入れる感性を持っているのである。

 劇中、彼の求めるサウンドを偶然発掘するシークエンスがある。
 あの「Moonlight Serenade」をリハーサル中、リードをとっていたトランペッターがソロが終わって席に座ろうとした時にペットを引っ掛け唇を切ってしまう事故がある。
 欠けたペットを補うのに応急処置で2番アルトサックスにクラリネットを持たせたところ、あの柔らかいクリーミーでメローなアンサンブルサウンドが生まれたのである。
 永年追い求めてきたMy Soundがこんなハプニングで生まれたのである。

 この他にも名曲の数々が誕生するエピソードと共に描かれたりして楽しい。
 また、劇中には本物の伝説的ミュージシャンが自身の役で登場する。サッチモことルイ・アームストロングやベン・ポラック、ジーン・クルーパの勇姿が観られるのも楽しい。

 いずれにしてもちょっと箸休め的にゆったりとリラックスしながら観るのが自分の定番となっている。