ベルサイユ製麺

母の残像のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

母の残像(2015年製作の映画)
3.8
狂人ラースの甥っ子ともなると、さぞスレまくっているのだろうと思いきや、コレがもう非常にフレッシュ。みずみずしいです。断片的なカットがシャッフルされる様は、一見荒削りともとれますが、ヨアヒム監督の頭の中のイメージどおりなのでしょう。

亡くなった母と、残された夫、2人の息子たちのお話です。死によって永遠に手の届かない、理解の及ばない存在になってしまった母。女性への向き合い方が分からなくなる男達。覚めていて、浮ついていて、だからバラバラなのだけど、それでも踠く彼らの姿には胸が痛み、同時に不思議な高揚感も覚えます。
物事は単純では無いのです。繊細で割り切れない事柄を、繊細で割り切れないまま描くという態度。信用出来ます!
完全に妄想ですが、ヨアキム監督が、ある特定の女性に対し抱いている多面的で異なった印象を、それぞれ3人の男達の主観に分裂させて展開した物語なのでは無いかな?なんて思いました。妄想です、妄想。
ガブリエル・バーン、久し振りに目にしました。主体性に欠くズルイ優しさは、申し訳無いのですがピッタリはまってました。
ジェシー・アイゼンバーグ、冷静ぶってるけれど自分と向かい合えない、ノロい駄目さ。いつもよりちょっと複雑な役柄に思えます。
デヴィッド・ストラザーン、ナイーブ無双!青い‼︎良いもの見せてもらったわー。この兄弟がグラウンド見つめながら喋ってるシーン。最高。
そしてイザベル・ユペール‼︎‼︎ちょっととんでもないよ。何にでも見えちゃう…。見逃せませんよ、そこのあなた!

人の本性の、ある側面だけを抗い難い豪腕でもって全体の様に思わせてしまうラース監督と、全ての事柄は都合良くトリミングされていると訴えるヨアキム監督。2人の信条の対比はとても興味深いです。両監督の今後に注目です!