ひゅうどんこ

母の残像のひゅうどんこのレビュー・感想・評価

母の残像(2015年製作の映画)
3.7
 原題(?)を直訳すると「爆弾よりも騒がしい」。
タイトルもそうだし、登場人物それぞれの胸のうちさえ如何様にもとれるような作りに感じます。

 父/長男/次男の3人でほぼ話は進行、その妻であり母である女性は、仕事のために家を留守にすることが多く、その彼女が急死したため3人は、普段からおぼろげであった彼女の面影を追うことをきっかけに、男として、家族の一員として、それぞれ歩き始めます。

 映画的によくあるドラマチックな展開よりも現実の日常の描写に寄せたかったのか、粛々と物語が流れるなかで、爆弾よりも衝撃的なことといえば、母の知りたくなかった秘密と彼女の最期にまつわる新たな可能性の2つくらい。でも、残された3人の心をざわつかせる事柄はそれだけではないようです。

 普段自分が遭遇するちょっとしたハプニングなんて傍目には分からないもの。けれど、それに一喜一憂する毎日が積み重なって日常になります。
個人にとってはそれこそが爆弾であり、この作品においての母の行為は、むしろ3人にとって爆弾ではなく、爆弾を着火するための導火線に過ぎなかったのでは?、とも思えるのです。

 そういう点で観ると本作は、地味な印象ではあっても、登場人物達の言動を演技巧者達によってよりリアルで丁寧に描いた良作と言えるでしょう。