あーさん

坂東玉三郎 日本橋のあーさんのレビュー・感想・評価

坂東玉三郎 日本橋(2014年製作の映画)
-
シネマ歌舞伎2023 第8弾

泉鏡花生誕150年記念作品④(11/3〜16)

これで泉鏡花シリーズは最後の作品。
"グランドシネマ"というタイトルが付いているように、歌舞伎役者は坂東玉三郎だけで後は主に舞台の役者が演じているので、これまでのいわゆる歌舞伎作品とはひと味違った味わいになっている。
玉様、実に25年ぶりの当たり役を演じた名舞台(パンフより)だそう。

普段あまり舞台を観ないので、とても新鮮だった。これ迄の3作はおしなべて摩訶不思議で幻想的な異界の物語だったが、こちらは大正時代の花柳界を舞台にリアルな男女4人の恋模様を描いていて、登場人物が皆どこかしら一筋縄でいかない。

玉様演じる日本橋 稲葉屋の芸者お孝の豪快な様、好きな人の前でのいじらしい振る舞い、どうしても手に入れたいものに対する執着心、e.t.c. どれをとっても完璧なほど計算し尽くされていて、観る者を圧倒する。
対する瀧の屋の芸者 清葉を演じる高橋恵子も負けていない。品の良さ、思慮深さ、自分を押し殺すが故の不器用な様が静かに、しかし確実に伝わってくる。
特に、清葉に自分を医者にする為に不本意な生き方を選んだ姉を重ねている医学生葛木(松田悟志)との全く台詞がない冒頭のお芝居は、仕草や所作が本当に美しく、息を詰めて見入ってしまった。

この三角関係?の間に入ってくるのが"熊"というお孝の腐れ縁の子持ち男(永島敏行)。
それぞれの思いが複雑に絡み合い、やがてそれはとんでもないことに発展していくのだった。。

何とも言えない悲劇だけれど、誰が正しいなんて言えない恋物語。
私のような平凡な生き方をしている者にとってはずっと先が読めず、ハラハラドキドキし通しだった。

特筆すべきは、葛木を演じた松田悟志!
あの板東玉三郎を相手に堂々と若き医学生を演じ切っていて、素晴らしかった♪
仮面ライダー龍騎(息子がドンピシャ世代♪)に始まり、朝ドラ(てっぱん)でも存じ上げていたけれど、こんな大役をされていたとは!
時代劇やシリアスな舞台等、これからも大いに期待したい役者さんだ。

いや〜この機会に泉鏡花先生の一連の作品を知ることができて、本当に良かった。。
人生、大損するところだった!


これから原作小説の世界にどっぷり浸ります。。
あーさん

あーさん