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ハッピーアワーのNUZOOのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
4.0
気まずくリアルな会話の連続で長い時間を見せたり、ゆったりとした時間感覚で臨場感を出す濱口竜介印はここでもしっかりあったが、いたく感動した『PASSION』や『親密さ』に比べると、登場人物たちの悩みがより大人っぽく複雑なものになっているのが難しかった。
恋愛より強固な結婚というつながりがより複雑なひずみを引き起こすということはわかったけど、彼らがどこに進めば救われるのかわからないままエンディングを迎えるのがビターだ(最後は少し希望もあるけど)。

ワークショップや朗読会をはじめとして、物語内とほぼ同じスピードで時間が流れるシーンがいくつもあるからこそ、息をのむようなバランスで立っていた椅子が倒された瞬間のハッとする感じなどで、時間や空間を自分も共有しているように感じられた。

会話シーンではワークショップ後の打ち上げの席とバスの中の会話が白眉。人と人が言葉を交わすことはお互いの人生をぶつけ合うことで、それがお互いの人生を変えうるということを見せられたような気になった。
また、会話シーンでの正面切り返しの多用が今作では目立つのも気になった。正面で切り返すと会話が断絶された印象になり、セリフと表情が強調される感じ。

トロッコ、バス、乗用車、電車、フェリーなど、今作は特に乗り物のシーンが多くてバリエーションもあったけど、濱口竜介は乗り物が好きなんだろうか。他の作品にも印象的な乗り物シーンが多い。

これまで観た濱口竜介の監督作のなかでも一番ぎこちない演技の作品だったが、幾多のワークショップを経て作られたというのでその内容も気になるし、あの棒読みのような言葉がどのようにして作られたのかは知りたい(こんど本読む)。
演技経験のないキャストが多くを占めていたなかでも、鵜飼の役が特に見事だったと思う(あのいい表情がまんじゅう大帝国の竹内に似てた)。
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