ちこちゃん

ハッピーアワーのちこちゃんのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
4.0
「言葉にすると嘘になるかも」
人に伝えるには言葉が必要ですが、発している言葉が本当の感情を表しているかはわかりません。
そもそも自分の本当の感情を自分は理解しているのでしょうか。本当の自分とはどんな自分なのでしょうか。「自分を知ることとは何か」がこの映画の一つのテーマです。

自分が本当に恋して相手をほしいと思うとき、自分では考えられない自分が噴出することがある、と映画の中で語られます。

317分の超大作です。
そして30代後半の友人同士である4人の女性は各人4様の出来事があり、それを通じて確実に自分を知り、4人とも強くなっていきます。30代後半という揺らぎの多い年の女性だからこそ成り立つ映画でもあります。職場でも責任ある立場に差し掛かり、女性としても子供をもつタイムリミットに近づいていき、段々容姿が衰えていくことに不安になります。
そんな自分自身の揺らぎの中で、その感情の揺らぎを映画は丹念に拾いながら、自分を知ろうと彼女達は前に進んでいく姿も映画は映し出していきます。そして確実に強くなっていく女性と対比して描かれるのは、その価値観の変容についていけない夫を含めた男性たちです。

もう一つのテーマは他者との距離感です。ワークショップで他者と背中合わせで一緒に立ち上がる場面があります。他者に寄りかかりつつ、自分も自立していないと一緒には立ち上がれません。きっと他者と付き合うのも同じなのでしょう。相手に寄り掛からなければ、相手側は信用されているとは感じないでしょうし、依存しすぎても相手の負担になるでしょう。

言葉でのコミュニケーションも、友人であっても全て思っていることを言えるわけではないですし、とはいえ、言わなければそれはそれで信用されてないと思われてしまうわけです。
そこにベストな方法はありません。ただ、相手をありのままに受け入れる寛容さが求められるのかもしれません。そして想像力も必要でしょう。

言葉の限界を知り、言葉への疑問をテーマの一つにしながらも、圧倒的な台詞での言葉量で映画は描かれ、感情の揺らぎを表現した映画でした。

個人的には三宮、JR普通電車、石屋川の御影がとても懐かしく、久々に神戸に行きたくなりました。
ちこちゃん

ちこちゃん