しぇんみん

パッセンジャーのしぇんみんのレビュー・感想・評価

パッセンジャー(2016年製作の映画)
3.9

巨大移民宇宙船アヴァロン。

その船は、植民惑星「ホームステッドII」に向け120年に及ぶ旅を続けている。

5,000人の乗客と乗務員は、完全自動制御の人工冬眠ポッドで全員眠っていた。

ある時、船が巨大隕石に衝突したことが原因で、冬眠ポッドの管制システムに異常が発生。

眠っていた乗客の一人、ジム・プレストンだけが90年も早く目覚めさせられてしまう。

決して壊れることのないはずだった人工冬眠ポッド。

再び冬眠することもできず、船の中でたった一人で生きることになったジム。

何とか生活を営もうとする彼だが、孤独には勝てず憔悴してゆく。

そんな彼がある日、正に"眠れる美女"オーロラを見つけるのだった...。

ジムが目覚めたことには、何らかの陰謀的なものがあるのかと思ったがそうではなく、不運な事故から始まる物語だった。

果てしなく並ぶ冬眠ポットとそこで眠る乗客、無尽蔵ともいえる食料供給力など、巨大宇宙船の船内と生活の描写は目新しく感じた。

ただ、ジムがたった一人で何とか生活しようと努力する姿は、観ていて辛いものだった。

巨大宇宙船内の広大な空間は、たった一人には本当に広すぎる。

孤独に耐えかね、長いこと逡巡した挙句ジムがとった行動は、「人間として」許されることではないと思う。

事実を知ったオーロラの感情もまた、十二分に理解できる。

だが、彼が「人間として」生きるには仕方ないことだったのではないか、とも思う。

オーロラがジムの「罪」を知りながらも再び強く惹かれ、彼を許し受け入れていく過程。

閉鎖された広大な空間で、一瞬だが長い時を、2人っきりで過ごすという状況は、よく言われるような「ストックホルム症候群」的状況とも言えるのだろうか。

本作は、賛否両論あるのが頷ける物語ではあるが、合理性と非合理性が混在する人間の心情を、上手く描きだしている作品だと思う。

単純に「面白かった」と言える物語だと思った。

ハナマル!

2018/11/10
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