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LBJ ケネディの意志を継いだ男のsugar708のレビュー・感想・評価

4.3
ケネディという強い光とその死という衝撃の影に隠れてしまった大統領の物語。

無知でお恥ずかしい限りですが、私はこの作品を観るまでリンドン・ベインズ・ジョンソン大統領の存在や功績を詳しく知りませんでした。

ケネディの目指した夢の世界の一部を実現した男、彼がいたからこそ不可能と思われていた人種差別を禁止する「公民権法」や「投票権法」という法案が通ったのには驚きました。

何故なら彼は南部テキサスの出身だからです。南部がいかに保守的かは南北戦争や近年の「グリーン・ブック」などを観れば否が応でもわかると思います。そんな彼が自らの地盤を失い、同じ南部の議員、有力者に疎まれながらもケネディの意思を継いで前に進んでいく姿と演説は心打たれました。

更に彼は「貧困との戦い」を掲げ、高齢者医療保険制度、奨学金制度、貧困家庭の援助等を行ったということなので内政に関しては本当に素晴らしい大統領だったのだなと。

しかし、これだけの功績を残しながら外交政策が苦手で「ベトナム戦争」の失敗により支持力を失い、憎まれ再出馬を辞退することになってしまったのは少々不運だったのかなという気もします。

優秀すぎるケネディの閣僚に田舎者と馬鹿にされ、仲間だったはずの人間にも後ろ指を指されるのは辛いものがあったと思います。そんな、四面楚歌の状態にも関わらず歯を食いしばり妻に支えられながら突き進む姿はケネディのようなカリスマ性はなくとも、強い理想のリーダーだと私は思いました。

ケネディ暗殺までの様子と、LBJがお飾りの副大統領と揶揄されるまでの道程を同時に描き、大統領の就任と力強い演説迄を描く流れやカメラワークなどに派手さはないものの、巨匠ロブ・ライナーの事実に基づき丁寧に描く映像は正にリンドン大統領らしい質実剛健な伝記作品です。
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