sugar708

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのsugar708のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

歪んだ関係の先、2人の間に愛は存在したのか。

先住民である彼らの問題は、コロンブスの大陸発見以降、大量虐殺、独立戦争…etc
本作における石油の利権問題に関しては今なお続いているということもありますので、ここでは書ききれませんが

「インディアンの命は軽い」

という言葉は非常におぞましく、彼らがオーセージ族に行った行為は嫌悪感しかありませんでした。この映画が白人視点で描かれていることに否定的な意見もあるようですが、個人的には本作を通してこの事件と現在まで続く問題を知ることができたので、その点に関しては意義があるのかなと。

私はそういった先住民の問題とは別に、アーネストとモーリーの関係性が非常に興味深かったです。

自由恋愛が主流の我々にとっては理解が難しい部分もありますが、政略結婚や許嫁が当たり前の時代からすれば、金や利権目当てで結婚するというのは理解できる部分があります。殺人という一点を除いては。

最終的に彼女を亡き者にすることを知っていながらも、同じ月日を共にすることである種の情が芽生えるアーネストと利権目当てというのを理解しながらも心を許していくモーリー。

中身が恐らく毒だとわかっているのにも関わらずその薬をモーリーに飲ませ、その半分を自分が飲むアーネストの姿は、叔父に逆らうことが出来ない運命を受け入れながらも苦しみを半分受け持つという歪な愛の姿に見えました。

そう考えると、アーネストの看護しか受け付けないモーリーもまた「自分が利権のために誰かに殺される」という運命をどこかで受け入れて、ならばせめてアーネストに手を下して欲しいという感情があったのかもしれません。

最後の面会の際に「殺すつもりだったの?」と問うモーリー。私には彼女は「もう嘘をつかず、正直に言うのであれば許そう」そんな表情にも見えました。

しかし、最後の最後まで正直になれない彼は本当に臆病で弱い人間だったのだなと。

その情けないバツの悪そうな顔をはじめ、犯罪者でありながらどこか憎みきれないキャラクターをディカプリオが本当に上手く演じているのも素晴らかったです。映画ファンとしてはJ・エドガーの名前が出てくるのもまた良かったなと。

都合の良い解釈かもしれませんが、実際に起こった先住民の虐殺にスポットを当てながらも、当人同士にしか理解の及ばない歪んだ愛の物語のようにも私には思えました。
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