やまもとしょういち

ノーザン・ソウルのやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

ノーザン・ソウル(2014年製作の映画)
4.0
1974年、イングランド北部の「クソみたいな町」バーンワーズを舞台にした音楽映画。音楽とファッション、つまりカルチャー、そして友情がその小さな世界を変えていくことの美しさと危うさを描いている。

主人公のジョンは地元の子ども向けの社交場でマットと出会ったことをきっかけに、人生が音楽で彩られていく。

夢も希望もない地方都市に暮らす労働者階級の子どもたちが、音楽を通じて夢を抱き、友情を築き、愛を、人生を知っていくという、ただそれだけのことなのに心が揺さぶられてしまう。

クソッタレな平日をやり過ごし、週末にノーザンソウルで踊ることは、労働者階級の些細なガス抜きだったのかもしれないが、この映画はそれ以上の何かを描き出しているように思う。

❇︎

舞台となった1974年といえば、労働者階級と地方経済を壊滅させるサッチャー政権樹立の5年前、世界中にディスコ旋風を巻き起こした『サタデーナイト・フィーバー』公開、そしてNYのパラダイス・ガラージやシカゴのウェアハウスがオープンする3年前、パンクが猛威を振るう前夜……この物語はレアグルーヴ、アシッドハウス、レイヴ、アシッドジャズなどUKクラブ文化の歴史の一部であり、セカンド・サマー・オブ・ラヴやブリットポップと同じようにUKユースカルチャーの重要なピースのひとつなのだということを感じることができる。