タスマニア

無伴奏のタスマニアのレビュー・感想・評価

無伴奏(2016年製作の映画)
3.0
2020年43本目。

セリフや言い回しが気取ってる。とてもいい意味で。
1960年代、学生運動、時代背景、若者の思想、文化、ファッション、恋愛。
現在の感覚とは違うところがないものねだりで美しく見える。
響子やエマが殿方を「龍之介さん」「渉さん」と呼ぶ音の響きは、現代で人を「○○さん」と敬称をつけて呼ぶそれとは違う趣がある。

成海璃子を「一リットルの涙」で初めて見たときに「なんて綺麗な子なんだ」と思った覚えがあり、そこから結構好きな女優さんだった。
久しぶりに見た気がするけど、本当に大人になったなぁという勝手な感想笑
生々しく絡み合うシーンとか見ると美少女は少女じゃなくなったんだなーって思ったりした。

学生運動のシーンから始まったこの映画は題材が政治的な主張を続ける若者達を描くのかと思っていたら、主題は全然違って驚き。
友達の一人が自殺未遂をしたときに言った「寂しかった。退屈だった」みたいなセリフのとおり、社会に対して声を上げることも大きな暇つぶしだったのかな。

池松壮亮の役柄が「海を感じる時」みたいな文学的な物言いをする面倒臭そうな男で、抑揚のない感じで話すし、なんだこいつはという感じ笑
何故響子は彼に惹かれるのだ。物憂げな大学生の特権か。

エマのように「愛のためならなんでも乗り越えられる」系女子のメンタリティとエネルギーは羨ましささえある。
人間の本能に全振りした感じ。
そして、そのエマさえもフリにするような龍之介の行動。
「あの2日間のために犯罪者になった」と語る龍之介と、連行されながら振り向き様に響子に微笑みかけるところは挑発的に感じた。
池松壮亮も斎藤工も官能的な男なんか上手い。
ベッドシーン多い理由もなんか分かるかも。イケメンとかそういうのとは違う次元で絵になるんだろう。

なんやかんやで誰もいなくなってしまった「無伴奏」で流れるカノンを聞いて、改めて「親しみやすく綺麗な曲だな」とカノンコードに毒された自分の感情を実感するのだった。
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