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京城学校 消えた少女たちのひこくろのレビュー・感想・評価

京城学校 消えた少女たち(2015年製作の映画)
4.2
うーん、って思わず唸りたくなるぐらい、とらえどころのない映画だった。

病気の少女だけが暮らす全寮制の学校。
やけに規律に厳しい教師たち。
日本名を付けられ片言の日本語で会話する女生徒。
誰もが何かを隠しているような様子。
そのなかで育まれる、静子と和恵の友情。

前半は完全に雰囲気映画と言っていい。
この出来がとにかく素晴らしい。
まるで「エコール」を彷彿とさせるような世界観を、韓国映画でも描けるんだ、と素直に驚いたし、魅入った。

が、ホラー的な要素が見えてきてからの後半、映画のタイプは明後日の方向へとガラッと変わる。
しかも、その方向は映画が進めば進むほどにエスカレートしていく。

まるで、芸術系の映画を観ていたら、いつの間にかハリウッドのエンタメ大作に変わっていた、みたいな感じなのだ。
しかも、難しいことに、前半も後半も、好みこそあれど、できとしてはまったく悪くない。
それぞれに十分以上の魅力があるし、どちらの部分も面白い。
ただ、悲しいくらいに嚙み合っていない。

作り手としてはたぶん後半の感じがメインなんだろうけど、それに合わせた前半にすればよかったとも言い切れない。
逆に、前半のトーンで映画を作ったら、それはそれで魅力的なものになったような気もする。
前半と後半の、どちらかが映画の邪魔をしているわけでは決してないところが、この映画の最大の問題点なのだと思う。

個人的には前半の雰囲気には思いきりやられたし、後半のエンタメぶりも楽しめた。
けど、この矛盾した感じを受け入れられない人も多いだろうし、トンデモ映画と烙印を押されてもしょうがないとも思ってしまう。
惜しい、とかではない。
なんか、うーんって唸るしかない映画だった。
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