KouheiNakamura

ディストラクション・ベイビーズのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

4.0
冷凍都市の暮らし、行方知らずのあいつ姿くらまし…。

今作で音楽を手がけた向井秀徳が頻繁に使用するこのフレーズ。まさにこの映画を象徴しているようなフレーズだ。
街中でぶらり喧嘩旅を繰り返す男、泰良。そんな彼に惹かれ、何かデカイことをしようとする高校生の裕也。その二人に巻き込まれるホステスの那奈。まるで未成熟な若者三人の暴走。その行き着く先は…?

まずは主役の泰良を演じる柳楽優弥がとにかく圧倒的。普段は無口で無表情、喧嘩の時だけ目を爛々と輝かせる。当てもなく街をうろつく姿は、まさに獣。楽しければええ。そう嘯く彼の背中には哀愁と狂気と虚無が表出している。不気味で孤独で暴力的。柳楽優弥は今作で完全に俳優として覚醒したのではないだろうか?
また今をときめく菅田将暉の下衆っぷり、小松菜奈の焦りも良かった。

全体的に映像や演出は荒削りで、90年代後半の混沌とした日本映画たちを思い出した。主役の名前が泰良(たいら)なのは「ファイトクラブ」のタイラー・ダーデンからだろうし、新井英樹の「ザ・ワールド・イズ・マイン」そのままな展開も新人監督の荒々しさを感じさせる。そしてその作風がこの映画には合っている。

喧嘩シーンはリアルでエグいし、女性に暴力を振るう嫌悪感を抱かせる場面も多いので容易にはオススメ出来ない。が、久しぶりにヒリヒリした。
KouheiNakamura

KouheiNakamura