10円様

レディ・プレイヤー1の10円様のレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
4.2
初めて観て映画は「インディジョーンズ魔宮の伝説」だった。ビデオテープが擦り切れるまで何度も観た。当時7才くらいだったと思う。ただだだ単純に面白くて、スピルバーグって人が作ったんだ。という事を友達に教えていた。たぶんその時から映画人生が始まったのだろう。

スピルバーグと言えばアメリカ映画の娯楽超大作の代名詞だが、2008年の「インディジョーンズクリスタルスカルの王国」を最後に大規模公開から遠ざかり、社会派路線に移行した印象がある。興行面で彼の名前は聞かなくなったものの、批評面や賞レースでは昔以上に活躍している。しかし、ファンがスピルバーグに求めるものが果たしてそういう映画にあるのかと疑問を抱かざるを得ない。彼は観るものを選ばない映画を作らなくてはならない。何故なら40年も前から映画界に活気を与えてきたのは、そして新しい映画少年を作ってきたのはスピルバーグの映画だからだ。

そして約10年ぶりの大規模公開の本作。
これだ。ファンはこれを求めていた。老兵が若者に託す夢のバトン、力を合わせて困難に立ち向かう少年少女。過ち、許し、友情、懐古。スピルバーグの真髄を凝縮させたストーリーはファンとして、人として涙無しには観られない。日本のポップカルチャーをリスペクトしている話題性、激甚なVFX空間は素晴らしい。しかし重要なのはそれではない。トレーラーハウスを重ねた高層住宅や離散しそうな家族、訣別する親友、大企業に対するレジスタンスを見よ。これがスピルバーグの描きたかった夢の達成と瓦解、抑圧からの解放、希望と自由。なのだろう。「現実はリアル」とは観客に向けたメタファーなのだと受け取る事にする。

ただね、こんな事を書いてはいるけど、ホントに嬉しいのはやっぱり日本人なら、オタクならなお知っているキャラクターがこれでもかと言うほどスピルバーグ映画に出演した事!日本の多くの企業は安心して、というかガッツポーズで使用権を委ねたという。えっ!こいつも?って驚きが何度も何度も襲ってくる!親日家スピルバーグのオタクッぷりはみんな知ってるが、原作者のアーネストクラインも、脚本家のザックペンも本作を劇場で観たお客さんもみんな愛すべきオタクなのだ。日陰者が大活躍する。というのもスピルバーグが好む構図で、アタリ社のゲームが重要な役割を果たす所も、ゲームのETに対してのスピルバーグなりの許しなのかなとも思える。しかしアタリのゲームは本当につまらなそうだ…

誰を発見できたか並べて行きたいが、ネタバレになるので、ぜひとも劇場で観る事をお勧めしたい。アレとかアレの登場には、あのシーンにはきっと胸が熱くなるはずだ。そういうファンの心をしっかり掴める演出が出来るところがホントに好きだよスピルバーグ。
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