KouheiNakamura

セトウツミのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

セトウツミ(2016年製作の映画)
4.2
くだらないの中に。

週刊少年チャンピオンで連載中の同名漫画を「まほろ駅前多田便利軒」の大森立嗣監督が実写映画化。セトとウツミ、対照的なのに何故か妙にウマが合う二人の高校生が放課後の川べりでダベり合う。ただそれだけの映画。セトとウツミ、それぞれに抱えているものがないわけでもないんだけどいわゆるドラマチックな展開はこの映画では全く起こらない。男子高校生が関西弁でグダグダと喋るだけの75分。
しかし、これがもう無類に面白い。菅田将暉と池松壮亮、今をときめく若手演技派の二人の演技がケミストリーを起こしまくっていて最高にゆるゆる出来る。時に漫才のようなやり取りを繰り広げる二人だが、そこに嘘くささは微塵もない。ウケを取ってやろうといういやらしさもない。極めて自然でゆる〜い間を効果的に使う彼らを眺めているだけでも時間が経ってしまっている。彼らのやり取りを時にはニヤニヤしたり、クスッときたり、ほっこりしたりしながら過ごす75分。映画館の画面でそれを味わう贅沢さよ。そう、低予算な映画ですが凄く贅沢な映画でもあるのです。

考えてみれば、僕たちの日常は映画みたいなことなんかそうそう起きません。ほんの少しの浮き沈み、後は長〜い無駄を生きていく。でもそれって悪いことでしょうか?この映画でウツミはこううそぶきます。「何かやらなあかんのか?部活で汗流したり、恋愛したりせなあかんのか?この河原で暇をつぶすだけの青春があってもええんちゃうんか。」この台詞が身にしみる方は、ぜひ劇場へ。きっと贅沢でくだらない、だけど尊い時間を過ごせるはずです。


ここからは余談なんですが。この映画のようなダラダラした青春、僕は中学時代に体験してました。放課後、級友二人とだらだらダベりながら帰る。好きな子のこととか、罰ゲームとか…本当にどうでもいいようなことばかりしてましたが、あの時間は今はもうないなー…なんてことを思い出しましたよ。
くだらないの中に、愛がある。星野源はいいこと歌うなーと感じる夏の昼下がりです。
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