ベルサイユ製麺

ベイビー・ドライバーのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)
4.7
しかくいプールがありましたー♪
まあるい砂場がその下にー♪
ぐるっと2つを囲ったらー
あっという間にiPod classic160ギガ シルバーの出来上がり〜♪
半年ほど前にリンゴ屋さんにiPod classicを修理に持ち込んだら自称天才様に「まだ動いてんすネー笑」と言われました…。あなた方が作ったんでしょうが⁈
こちとら大昔、大切な方から頂いて以来のiPod classic党でさぁ。ipod touch?何それ?ホイール無いなんてダサイ。現在は音楽用のclassicとラジオクラウド用のiPhoneと、録音したラジオを聴くためのラジオレコーダーの3点(それぞれイヤホンも違う)を持ち歩いています。サングラスとイヤホンして歩いてると、半ば部屋の中に居るみたいで愉快です。なのでベイビーには只ならぬ親近感!まあ、自分は逃し屋どころか、上手に歩くのもままならないのですが。

エドガー・ライトを、ちょっと気の利いた作品を撮る器用貧乏な監督、ぐらいに思っててすいませんでした…。あなたこそが本物でした。
最初から最後まで、ずーっと画面が揺れていた、じゃなくてこっちの頭が揺れてましたね。シーン単位でことごとく絵と音を合わせているのは勿論、大きな単位で見れば映画全体の流れが、まるでハウスDJのロングセットの様に夢見心地なジャーニーに誘い、小さな単位では、どんな細かい動作にもオーガニックなグルーヴ感が宿っています。だから、BABYがDRIVIN'なシーンはピークタイムで全細胞が爆発、のみならずアクション要素の無いメロウな会話シーンでも、頭がふわふわ、画面はゆらゆらと絶え間なく揺らされてしまいます。ああ、この幸せな時間が終わらなければ良いのに…。気がつくと、悲しくもなんとも無いシーンで涙ぐんでいました。こんな感覚は『サニー 永遠の仲間たち』以来ですよ…。
ストーリーはごくありふれたボーイ・ミーツ・ガール・イン・クライムアクションな訳ですが、今作然り『ドライブ』然り、作りがシンプルな程、素材の良さと監督の手腕が引き立つというもの。
エドガー・ライトは偏愛を描く作家だとばかり思っていましたが、どうやらもっと普遍的な愛の伝道師であるのだと認めざるを得ません。家族愛、パートナーへの激しく官能的な愛、生涯で最も美しい初恋、師弟(?)愛…。愛にかられた人達の燃え上がる様な想いで物語は力強く駆動し、愛を無くした、見放された人はただ殺したり、殺されたり。だから、『ベイビードライバー』を観返して、身体が動かなくなったら、自分も終わりだなって思いますね…。
サングラスにバーシティジャケット、でナイーブな雰囲気。“ベイビー”は言い過ぎとしても、半人前の小僧ぐらいにしか思われてなかっただろうから、だからそんなベイビーが運命の女の手を引いて現れた日にゃ眩しすぎて、どんな外道でも心を洗われてしまいますよね。だから、ラストの展開はもう凄く美しくて大好きです。ボスの描かれない過去にも優しい眼差しを送ってしまいます。
それにしてもこんな大傑作を、ケヴィン・スペイシーが嫌で、怖くて観る気が起きない人達がいるのだと想像するとやはり許し難い。テキィ〜ラって叫びながらスペイシー自身を蹴り上げてやりたい。自らの罪からはどんな腕利きも逃げられないんだ。報いを受けてから、リスタートせよ。

別に奇抜な事をやってるでも無くて、頭の中で渦巻いてた理想の映画を、そのまま取り出したってだけなんだろうけど…。
エドガー・ライト、こんなの撮っちゃって次どうするの?思いつかなかったら『ベイビー・ドライバー2』でも良いんだよ?