ゲイリーゲイリー

レディ・バードのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
3.5
"レディ・バード"からクリスティンへと羽ばたく物語。

青春を描いた作品では、友情、恋、家族関係、夢、それらのうちのどれかにフォーカスが当てられる。
本作はそれら全てにフォーカスしている。そして特に素晴らしいのは、その青春の要素とも言えるそれら全てが主人公の成長の糧となっているところだ。

また、それぞれのリアルな描写もお見事。
いわゆるスクールカーストの上位にいる派手な人物に惹かれて、自分を偽り本当の友人と距離が離れていくシーンなどは見ていて痛々しいが、どこかその気持ちも懐かしく感じられた。

個人的に本作の最も素晴らしかった点は、愛情というものは必ずしも明確な形で伝わるわけではない、もどかしさを描いていた部分だ。
それが特に顕著に現れていたのが、クリスティンと母親の関係性であろう。
我が娘のためを思っての言動が、娘にとっては自分を嫌っているために行なっていると受け止められ、歯痒さや苛立ちを隠せない。
そして母親から愛情を貰えないと不安が募り自棄を起こす主人公。
どちらも根底には愛情があるが故に、もつれた関係になっていく。

また、母親に対する気持ちと自主の故郷であるサクラメントの気持ちがシンクロしている点もうまいなぁと思った。
そしてシスターが言った、
「同じことだと思わない?"愛情"と"注意を払う"は」
このセリフは本作のキーだと思う。

愛情を伝える事も難しいが受け取る事も難しい。
しかしだからこそ、愛情は尊くも美しいものである。