滝和也

パニックの滝和也のレビュー・感想・評価

パニック(1946年製作の映画)
3.6
流言飛語。
悪意と歪む正義感、

嫌悪の気持ちから
ラストに起こる
パニックが正に胸糞
悪さを際立たせる…

「パニック」

舞踏会の手帳やパリの空の下セーヌは流れると言った叙情的な作品から、自殺への契約書と言ったサスペンス作品まで多才さを魅せるジュリアン・デュヴィヴィエ監督のフレンチ・ノワールです。が…まぁ胸糞悪い系…。

パニックと言う題名ですが…小さな街に起こる殺人事件を題材に人の醜悪さを見事に描いた作品ですね。ストーリーは端的に言えば、街の片隅にいた人付き合いの下手な見た目の良くないおっさんが、殺人現場を見たらしく、殺人犯の恋人に惚れて、彼女を助けようとしたら、罠にハマり…と言う小さなお話なんです。

田舎町の住人がまぁ…醜悪。犯人の罠にこちらも簡単にハマるのですが、そもそも見た目も付き合いも悪い彼に悪意を持ってる。もしくは歪んだ正義感、野次馬根性だけで…彼を追い込んで行くという。

オヤジで髭面、太め、何をしているかわからない彼にはこの部分では罪はないんですが、ただ…何故犯人を見たことを警察に言わないのか、恋心からなのでしょうが…、それ故にファムファタールにハマると言う…哀れすぎる…。

演出としてこの街に移動遊園地が来ているタイミングにしてあり、それがこの話を更に物悲しくしています。明るい歌は皮肉以外の何者でもなく、その楽しさは孤独な男にとっては悪夢以外の何者でもない。ゴーカートのシーンは醜悪さを超えた怖さが恐ろしい…。

ラストにはまさに街ぐるみがパニックになるシーンがあり、題名は確かに間違いない。人の差別意識や歪んだ感情が吹き出ていて恐ろしい下りになってます。顔が見えない群衆の怖さが出てます。

現代は、それがネットになっている訳ですが…。人はいつにしても変わらないと言う事も教えてくれるクラシックノワールです。短い作品ですので見やすいですが…心に余裕がある時見てください(^^)
滝和也

滝和也