現代に蘇ったアドルフ・ヒトラーが巻き起こす騒動を描くブラック・コメディ。
2014年のドイツにタイムスリップしたヒトラー。そこは戦車が走る戦場ではなくセグウェイが走る町。
向けられるスマホや差し出されるスナック菓子に戸惑うヒトラー。突然、戦争から平和へワープした彼は70年分の情報収集を始める。
ナチス・ドイツの指導者も時代が変わればただのコスプレおじさん。文明の発達に驚きながら、時代錯誤の物真似芸人になる姿を徹底的に描くコメディだと思っていた。
底抜けの明るさと突き抜けた笑いを期待したが、軽いノリではなく真面目に総統ヒトラーの人物像が描かれていた。
インターネットのWikipediaを見ながら、インテルネッツのヴィキペディアと呟き、フェイスブックで親衛隊を募るコミカルな場面と後半のシリアスな場面のバランスが良かった。
深刻な問題や歴史から逃げず、難民やユダヤ人など際どいテーマにも向かい、かつての独裁者が披露する演説は見応えがあった。
長い沈黙で注目を引き付け、低俗な番組を垂れ流すテレビ業界を一刀両断。
「我々は奈落へまっしぐら」
圧倒的な迫力と説得力、そして恐怖を感じた。
大衆を扇動したのではなく、大衆が私を指導者に選んだと言うヒトラーがラストで口にした言葉にゾッとした。