チェックメイト

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のチェックメイトのレビュー・感想・評価

2.5
映画界の寵児ともいうべき天才ドランの最新作。
期待しない訳にいかない。
大仰なタイトル。
思わせ振りな日本語のキャッチコピー。
ミステリアスな表情のポスター。

なんかすっごくモヤモヤした映画。
タイトルが内容と全然合ってない。

ドノヴァンというドランのような超売れっ子俳優とひとりの少年との会話(文通)によって夭逝したアイドルの心の内が語られる物語かと思ったが。
普通そう思うタイトルだ。

第一、手紙の内容はほとんど出てこない。だからふたりの相手に発した想いはまったくわからず、さりとて世間に騒がれながら孤独にあって(かどうかも不明なのだが)死を選んだドノヴァンの生きざまが描かれてるかと言えばそうでもない。繊細ではあるようだが死ぬほどテンパってたようでもない。
何かマネージャーに愛想つかされてるようなとこあったけどまさかそれで?

確かにジョンと少年ルパートふたりの行動は描かれる。ただ、ルパートとジョンの両方の生活を描くことで焦点がボケた感じ。平行するふたりの人生。
ゲイであることでうまくいかない(でもないような)ジョンの生きざま?
少年ルパートの疎外感?

またナタリー・ポートマン演ずる母親も良くわかんない人。
ルパートを愛しながら自分の夢を押し付けるステージママなのかと思うんだがそんなでもない感じ。
ルパートが反発を覚えるほど強烈でもない。
ルパート演じるジェイコブ・トレンプレイはさすがに演技うまいけど。

二人の内面に肉迫するかのようなクローズアップのアングルが多い。
けど内面にはフォーカスしない。
(ひょっとして)複雑で繊細な内面を表現したかったなら全然ダメだ。
例えば他人に理解されない不可解な行動とか不条理な言動とかそういうのも何もない。
だったら手紙で告白させろよといいたくなる。

また文通を回想する青年ルパートもやたら思わせ振りに過去を語るんだが肝心の二人の交わした内容には触れないし語らない。

あえて言えばアイドルに心酔していた少年の、文通の破綻によって母との関係を語る親子の物語?
だったらドノヴァンの死と生の中身は関係なくても成立するが。

アメリカの批評家から酷評だったらしいが、それは正しかった。
ドノヴァンの死と生がどんなだったかわかんないし、アイドルと少年が心を通わせた?かもしれない手紙の内容も出てこない。
文通の破綻というターニングポイントはある。
だがジョンは?という感じ。
そこもジョンがどう苦悩したかがない。
一体ドランは何を描きたかったんだろう。
脚本というよりストーリーが突き詰められていない気がする。
コンセプトが不明。

ハッとするような死の真相、グッとくるような人が羨む二人の関係など期待したが皆無。
ここ含め一般サイトでの評価かなり高いけど見るポイントが違うんだろうか。

表現においても展開においても、天才ドランのひらめきやさすがと思わせるポイントは感じなかった。こっちの感性が鈍いのかなぁ。
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