あーや

メッセージのあーやのネタバレレビュー・内容・結末

メッセージ(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

んんー。すごい。こんなSF作品もあるとは。驚きました。
「Arrival(邦題:メッセージ)」です。異言語を貪るように学ぶことが好きな人にはぴったりの映画です。 映画というよりも2時間まるまる言語学の授業のようでした。ペルシア語、チェス、サピアウォーフなど繋がりのあるセンテンスに映画館で遭遇するなんて!
大学生時代に手に取ったものの理解するまでには至らなくて諦めたソシュールさんの言語論をもう1度学び直したくなった作品でした。あと原作「あなたの人生の物語」も読みたい。嗚呼、パソコンと向き合って仕事をしている時間が勿体無いな。。
言語学を少し摘み食いしただけの私のような人間でもハッとするような気付きがあるし、過去と未来が不思議な繋がり方をしながら今が進んでゆくというSF映画らしい面白さもある。もしかしてヘプタポッドとの対話との中で主人公の思考も通時的→共時的に変化したのかな?なんて思い込んでしまって・・。 脳天気に観られる映画ではないけれど、観賞後の脳内に点在する絡まった疑問符をこじつけでも良いから解いてゆくことが快感です。そのスッキリするこじつけ作業は今も絶賛進行中です。

大学で言語学の教鞭を取るルイーズ(元Hooter's girl エイミーアダムス)は、ある日地球上の12箇所に突如表れた未確認物体(featuring バカウケ)の中にいる7本足のイカくん(通称ヘプタポッド)×2匹の言語の解読役をウェバー大佐(痩せたフォレストウィテカー)から任命される。ルイーズのパートナーとして数学者のイアン(老けたホークアイ)も同じく大佐から任命された。軍基地に泊まり込みでイカくん達とのコンタクトを試みる2人。イカくん達は奇妙な声?音?を発しますが、彼らの用いる言語は視覚言語であることに気付いたルイーズは白版を用いて彼らの言語を徐々に解読してゆく。ところが解読してゆくに従って彼女の中で異変が起こる。経験したことのない記憶が過去としてフラッシュバックするようになったのです。実はイカくん達には断片的に未来を見る力があり、ルイーズは彼らの言語を身に付けてゆくにつれて彼らの思考も身につけていたのでした!(サピアウォーフの仮説です) ヘプタポッドたちが地球にやってきた理由を知ったルイーズは、早速今の自分が果たすべき役割を行動に移します。1年半後の自分の未来を手がかりに再度世界を一つにまとめ、最後にはフラッシュバックで見てきた決して明るくはない自分の未来を全て受け入れたのでした。
エイリアン襲来のSF作品なのですが、言語学の可能性をメインに据えて彼らと交流する展開が新鮮でした。言語学者が主人公という作品自体あまり無いですよね。著名な言語学者は哲学者でもあるので本作でクローズアップされたことで彼らも報われたことでしょう。ただ、せっかくパートナーとしてそばに居るのだからもう少し数学者も活躍させて欲しかったなぁ。あの場でルイーズと一緒に頭を抱えていても一体何を研究しているのか解らなかった。惜しい。
それにしても原作者のテッドチャンは相当言語学に精通しているのですね。短編らしいので早速読まねば。関連する本を読んでいかないと次から次へと襲ってくる知的好奇心に追いつけない。
あーや

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