ふしみあい

メッセージのふしみあいのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
5.0
話が難しかったとか時間軸がややこしかったとかそんなことはさておき、この映画を見て特筆すべきなのは宇宙船のデザインだと思う。

宇宙船だ、とかロボットだ、とか、数多くの宇宙映画の中でそう言う類のものはとにかく部品をつけまくって、なんだかよくわからない素晴らしい科学の総力を結集させて作られたのだとアピールするものが多い。
しかしメッセージの宇宙船は違う。あそこまで洗練され、余分なものを削ぎ落とした宇宙船は未だかつて見たことがない。

あの2001年宇宙の旅の宇宙船でさえ、ごちゃごちゃとボタンがついていたり、巨大な装置や必要な部品がついていた。(それがいいのだが。)
また、宇宙人が乗ってやってきた宇宙船、未知との遭遇でも派手な光に音楽、光り輝く内部、降りやすいようにつけられたタラップ、見た目も実にごつくて華やかである。(それもまたいい。)
マーズアタック!!でも、禁断の惑星でも、地球の静止する日、でも、シンプルだがいわゆるUFO、円盤型である。

対してメッセージの宇宙船は、そもそも人間が作ったものではないし、人間が乗るものではない。しかし未知との遭遇のような人間が想像しうる、いわゆる宇宙船っぽいもの、を完全に排除して、そもそも宇宙船に見えないものになっていた。そしてそれが予告やポスターでも目についた。

また劇中で、広野や大海原のど真ん中に浮かぶ様はシュルレアリスムのそれであり、どこか非現実的な、浮世離れした映像や雰囲気を作り出している。

しかし偵察用か何用かはわからないが、分離できるポッドがついていたり、人間が会話するのに使った応接間のような空間があったりと、割と実用的で、これは本当に宇宙船なのだと実感できる。
調査隊が宇宙船内部に侵入する時の映像がとんでもなくかっこよく、重力の違いで人間が入れるようになっている仕組みのアイデアもすごい。

宇宙船に反してエイリアンは割とエイリアンぽいと言うか、このヘプタポッドたちが本当にこの宇宙船を作ったのか、という感じだったけれど、彼らが使う表意文字は美しく幻想的。映画の雰囲気とすごくよくあっていた。

終盤にかけて、そういうことだったのか!とセリフやフラグが回収されていく展開は本当に見事。
そして主人公ルイーズの強さや決意に涙する。映画が終わってもキャラクターのその後がわかる映画、アイデアがすごいし、編集の妙。

よくある過去の傷を負った主人公が、新しいものとの出会いの中で生きる意味を見出していくーーーという感じの前半から、物語が大きく動き出す後半との高低差が面白い。正直前半は少し眠かった。
しかし一度見たいま結末がわかっているからこそ、セリフや映像にもっと意味が出てくると思う。また映画館に見に行こうと思う。

宇宙人や宇宙船が出てくるSF映画なのにドーンガシャーン!というような展開がなく2回目は見に行かない、と言う友人もいたが私は逆で、その意見もわかるけどそれだけが映画館で見る意味ではないんじゃないかなあ、とうことを言いたい。ドゥニさん、期待を裏切らず、美しく荘厳でいろんな解釈のできる素晴らしいSFをありがとう。ブレードランナー続編、今年一番期待しております。