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ぼくのエリ 200歳の少女のKのネタバレレビュー・内容・結末

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

4.5年前にリメイク版を鑑賞し、オリジナル版を観よう観ようと思っていましたが、気づけばかなりの月日が経っていました、、、

以下ネタバレありのレビューです。

本作はストックホルム郊外を舞台にしたオスカーとエリの淡く切ない恋物語であり、タイトルからも想像できますが、エリはヴァンパイアで人の生き血を吸わないと生きていけません。

古典的なヴァンパイア像をなぞりつつも、派手な演出に頼ることなく、あくまでオスカーとエリとのヒューマンドラマに留められているのが魅力です。

だかしかし本作(日本版に限る)には一つ大きな問題があります。

劇中で度々エリはオスカーに対して「もし、私が女の子じゃなくても好きだと思う?」という質問を投げかけます。

観客側は「もし、私がヴァンパンアでも好きだと思う?」という風に解釈するのは当然だと思いますが、それは大きな間違いです。

映画の中盤あたりで、エリが服を着替えるシーンがあり、オスカーが"ボカシ"のはいった股間を見て困惑したような表情をします。

無垢な男の子が恥ずかしさでそういった表情になったように思えますが、スウェーデンの無修正版では、エリの股間は男性器を去勢したような跡があります。

つまりはエリは元々は男の子であり、オスカーはヴァンパイアというだけでなく、元男であったという事実でさえ、受け入れて愛すのです。

もうそれは異種族愛とか異性愛とか、そんな安易な言葉で片付けられるようなものではないんですよね。

寒空の下、雪に囲まれ、真に孤独を理解できていない大人たち。

「孤独」「閉塞感」「不自由」その全てを乗り越えてお互いが求め合い、ラストで電車に乗り逃避行するシーンには何者にも代え難い愛と自由があるのです。

しかしエリはヴァンパイアです。故に歳をとりません。その一方でオスカーはいつかは老いがきて、またエリは孤独になります。

カタルシスと同時に、それは刹那的なものであると気づかされるのです。

「美しくも切ない」。まさにこの言葉がぴったりだと思います。

冬が近づき、人肌恋しくなってきたこの時期にこそ観てほしい一本です。
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