mimitakoyaki

溺れるナイフのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

溺れるナイフ(2016年製作の映画)
3.5
原作未読、山戸監督の作品も初めてです。

正直、ティーンの恋愛映画に苦手意識があって、もしこの作品も薄っぺらい感じだったらツライな…と不安な気持ちでの鑑賞となりました。

けど早い段階から、ありがちなティーン向け恋愛映画とは違うじゃないか、そう思って画面に引き込まれました。
熊野古道のような原始的で神聖な森や深い碧の海、田舎の家や水路の通る道など、とにかくロケーションが素晴らしく、映像がとっても美しくて独特の世界観を作っていました。

人気モデルで気鋭の写真家による写真集も出す夏芽が、神主の息子で金髪のミステリアスなコウに出会い、衝撃的に惹かれ合うのですが、ああいう出会い、良いですよねぇ。
あんな風に出会ったら、それは稲妻に打たれたかのように恋に落ちても納得です。
だって、そこは人が立ち入ってはならない神聖な神様の海なんですよ。
そこで2人だけの秘密を共有して、一緒に潜ったりなんかしたらもうね。
そのシーンもほんとに美しく神秘的に撮られていて、また小松菜奈と菅田将暉が画になるのよねー。

人を魅了する美しさを持つ特別な少女、神に仕える特別な少年。
これがもう無敵な感じになるんですよ、本人たちはね。
あー、10代やなあ、眩しいなあって。
ほんとにキラッキラで万能感に満ち溢れてる感じがおばちゃんには眩し過ぎましたがね。

だけど、そんな無敵な万能感が打ち砕かれる事件が起きてしまい、2人の関係も壊れてしまい、それからのコウは、罪悪感と敗北感に苛まれ自信を喪失し、夏芽はこんな田舎からもっと広い世界へ翔ける可能性を持っているのに、自分は神社の跡取りとしてこの町から離れることはできない、その閉塞感とジレンマが苦しくて痛々しい。
だけど、不良がすぐイキってケンカする映画みたいな感じに成り下がってしまってるのがなんか残念。

あんなにミステリアスで特別だったコウが田舎のヤンキーになるのはツライ。
あと、気色の悪いストーカー男がなんか唐突で、物語の転機となる大事な場面なんだけど、なんか突飛な印象を持ちました。

本当の心は互いに惹かれあってるのに、挫折を乗り越えられない苦しみと弱さ、それも切ないですけど、あたしやったら完全に大友くんですよ。
夏芽を好きなのに、夏芽の本心を知ってるから自分は引いて友だちでいようとする奥ゆかしさとか、ふさぎ込む夏芽を笑顔にするために寄り添う姿にキュン死しかけましたわ。
バッティングセンターとか、お見舞いのくだりとか、椿のシーンとかたまらん。

夏芽とコウが走るシーンも多く印象的で、この時期にしかない刹那な煌めきが美しく描かれていて、この監督の作風なのかもしれないけど、音楽の使い方も独特でした。

120
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