家族、という名の地獄。
劇団SHAMPOO HATの同名戯曲を同劇団の主宰・赤堀雅秋監督が実写映画化。通り魔事件の加害者家族が辿る運命を、時系列を交錯させながら描く問題作。
まあ〜キツイ映画だった。三浦友和演じる父親、現実にたくさんいるような超クズ親父。なんだけど、腐っていたのは本当に父親だけだったのか？そんなことはない。母親、長男、次男。それぞれが家族とちゃんと向き合ってこなかった。その結果が次男の起こした通り魔事件。でも、彼らは狂人ではない。僕らと変わりない普通の人たち。そんな彼らが人間関係をめんどくさがり、少しずつサボッたから今がある。映画は彼ら家族の事件前の日常と事件後の場面を交錯させて描いているが、何てことはない彼らの事件前の日常の場面で観客は気付く。葛城家はそもそも家族として成り立っていなかったのだと。
食事はコンビニ弁当、次男はひきこもり、母親は全てを諦めたような表情。唯一まともに見えた長男でさえも、仕事をクビになり職探しに奔走する。ベンチに座り、求人情報誌をめくりながらパンを頬張るその姿には生命力は微塵も感じられない。そんな彼は葛城家の中で最も詫びしい最期を迎える。
事件後の場面で主軸になるのは、死刑囚の次男と獄中結婚した女性。彼女は崩壊した葛城家の真実を知り、家族になりたがる。しかし、彼女が直面するのは「人と人とは分かり合えない」という絶望。獄中結婚した次男との間にも愛はない。救いもない。
この映画が残酷なのは、彼らがひょっとしたらうまくいっていたのかもしれない可能性を示していること。アパートでの父親以外の三人が他愛もない会話を交わす場面は何とも切ない。明日で世界が終わるとしたら、何が食べたい？こんな話題さえも普通に交わすことができなかった家族…その有り様は余りにも残酷で哀しい。
