Oto

ゴジラvsコングのOtoのレビュー・感想・評価

ゴジラvsコング(2021年製作の映画)
3.5
たまにはこういう超大作も観ておくと学びが多い。予告でネトフリの広告流れてて驚いたりした。

ミリーボビーブラウン目当てという浅い動機で観たけど、よっぽどの映画好きでない限り、好きな役者が出てるとかリメイクとか、わかりやすい接点がないとわざわざお金払って挑戦しないなと思うし、実際今回も予習とか一切せずにかなりライトな気持ちでみたので、新鮮な体験だった。ハリウッド映画って低関与商材なのか。若い人は外したくない欲求が強いらしいけど、友人とあそこひどいみたいな話をする楽しさもある。

物語は、
コングを飼育している学者と少女が、突如ゴジラから襲われた企業から協力を求められ…その裏で陰謀信者のオタク達が独自で捜査を続けると…企業の秘密や裏切りが暴かれ…
というベタなもので、豪華なキャストに派手なVFXとアクションで、まぁ誰しもが気を張らずに楽しめる作品。

踏み込んでみると甘い部分は多くて、
・ゴジラとコングが闘う根拠が弱く、昔からの因縁という謎の説明しかないので、中盤で何をみているかわからなくなる
・魔法があまりにも多くて、地底にある重力が反転した空間に入り込むための装置、香港へと飛ばす装置、モンスター…「こんなことある?」とさすがに思考が止められてしまう
・悪の詰めが甘すぎて、潜入されても気づかない、トラブルが起きた次の瞬間に死ぬ…など、緊張感や達成感が物足りない
・ステレオタイプな人物造形。問題を解決に導くオタクプログラマー、優秀だけど利用されるアジア人。さすがに描写が古い
などなど、ツッコみたい部分は大いにあるけど、

ゴジラVSコングが、ゴジラfeat.コングになるというコアのアイデアは熱くて面白いと思うし、あまり複雑にせずにコアの面白さを最大化するシンプルな構造にした方が良かったのでは…?と思った。
並行して進んだオタク軍団と学者軍団の物語は結局合流することなく終わった印象だし、要素を増やしすぎて収拾がつかなくなったのをメカという新たな魔法を追加して解決したように見えた。
ビリーワイルダーが「クライマックスで新しい要素を追加するな。既に出てきた要素で解決に導け」と言ってた。

天災を引き起こした悪人によって、本来は味方である人を敵と勘違いして、闘う必要のない人たちが闘いまくっているのは、たしかに現代のメタファーとして面白いと思うし、
コングや少女のような自ら危険を冒して世界を救おうとしている存在を利用して、自らは一歩引いた安全な立場から指示をするだけの企業や学者たちを見ていると、マネジメントやディレクション至上主義の社会にいる自分としても身につまされる。

ハリウッド大作といえどやっぱり誰かに自分を重ねてみたいと思うし、スピルバーグの映画のように童心に返って見られるほどではないし、学者たちも感情移入するには状況があまり共有されていないから、飽きた時間があるのは一つ一つの要素の描きが薄いからだと思う。オタク軍団だけでもちゃんと描けば十分成立するし、日常の家庭の描写とかほぼ全くなかった。

テーマも「共存していれば互いに幸せなパートナーを支配しようとして天罰を受ける人間の愚かさ」だし、ゾンビやサメ映画と同じように結局は人同士の対立。
そのジャンル映画として約束された面白さを超えるには、もっと工夫が必要だったと感じる。
そもそもがリメイクだしシリーズだからこれでいいのかもしれないけど、MCUのような社会現象にするにはやっぱり挑戦が足りない。

でも海上決戦も香港のネオン街も重力反転の地底も本能的に楽しい映像ではあるし、緑汁を喰らってるコングとかイケてた。
それに、陰謀論者の男はすごく魅力的なキャラクターで主人公になりうると思ったし、おそらくモデルがいそうな感じなので調べたい。水道水飲んでる?これはバズるぞ…!とかは現代にアップデートされた新鮮な魅力がある。

人はなぜ巨大で恐ろしい怪物を見にわざわざ映画館まで行くのか、とか考えながら見てしまったけど、なにか我々には想像もつかないことを起こしてくれそうな、秩序の破壊を期待してるのかなとか思った。円谷映画とか詳しい人に成り立ちとか聞いてみたい。
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