KouheiNakamura

ジャック・リーチャー NEVER GO BACKのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

2.5
違う違う、そうじゃ、そうじゃない。


トム・クルーズが無骨なアウトローに扮したジャック・リーチャーシリーズの二作目。前作のクリストファー・マッカリー監督からエドワード・ズウィック監督へ交代しての続編。

前作である『アウトロー』はCG全盛の時代にあえて生身のアクションにこだわった、70年代のアクション映画を思わせる力作だった。特にBGMを流さず、車のエンジン音だけで見せきるカーチェイスシーンは素晴らしい迫力だった。また主演のトム・クルーズの少し抜けた魅力が炸裂していて、常に緊張感に満ちているというよりは良い意味でオフビートなテンポも独特の味になっていた。笑っていいのか迷う場面も多く、中々の快作だったと記憶している。

さて、では監督が交代した今作はどうか。
…正直に言うと、極めて凡庸なアクション映画になってしまったと思う。前作のジャック・リーチャーは基本的に一匹狼でハイテクなものを身につけない美学が一貫していたのだが、今作のジャック・リーチャーはほとんど別人。娘ではないかという疑いのある少女(絶妙に可愛くない…)と元同僚の女軍人と3人で擬似家族のような関係になる。普通にスマホも使う。…そんなリーチャーは見たくなかった。
脚本には大きな破綻はないが、とにかく地味で盛り上がらない。肝心のアクション場面も見せ方が不味く、高揚しない。前作のクライマックスのようなアイディアや、バスルームでの乱闘のようなユーモアのあるアクションシーンは皆無。群衆の中をヒーローがかき分け、悪役を追う。このシンプルに盛り上がるはずのクライマックスさえもどうにも冴えない。同時期に公開したジェイソン・ボーンのアクションシーンの緊迫感に比べれば雲泥の差だ。

トム・クルーズ主演の普通のアクション映画としてなら、まあ楽しめる。しかし、ジャック・リーチャーシリーズとしては全然ダメだ。話運びから演技から、何から何までウェットに過ぎる。
ここ何年かの好調なトム・クルーズ映画に味噌をつけた一本だと思う。残念。
KouheiNakamura

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