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私の血に流れる血の708のネタバレレビュー・内容・結末

私の血に流れる血(2015年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

かなり解釈が難しい作品。観る側それぞれに完全にゆだねられているように思えました。

17世紀。司祭を誘惑して自殺へ追い込んだことにより、魔女としての嫌疑をかけられた修道女の魔女裁判の話かと思っていたら、いきなり何の脈略も説明もなく、数百年後の現代で人間たちに混じって生きるヴァンパイアの伯爵の話に切り替わります。伯爵が住処にしているのは、かつて魔女裁判の舞台となり、今は朽ち果てた廃屋となった同じ村にある修道院。都会から来たロシアの富豪と税の査察官が、その廃屋を買いたいと伯爵の元を訪れるところから、もうひとつの話が始まります。

魔女狩りの話もヴァンパイアの話もそれぞれで成立していて、切り分けてしまえば独立した作品になると思うのですが、それを混在させてクロスさせることで異質な何かが生じて、観る側を意図的に混乱させているかのようにも思えます。「え?ヴァンパイアは修道女や、それ以外の誰かの生まれ変わりなの?」という感じで、ふたつの話をロジカルに結びつけようと考察して、メタファーや因縁を探して紐解こうとして、何かしらの繋がりや共通点を見出そうとすればするほど、どんどん解釈できなくなっていく感じ。

でも、ふと考えてみれば、今誰かが住んでいる場所も、かつては別な誰かが生きていた場所であって、時代ごとに同じ場所でいろんな出来事が起きていて、それが時間の縦軸上に存在しているわけで。その同じ縦軸から切り取ったものを並べると、この作品みたいな感じになるんだろうなと。それも、因縁や関係がありそうな出来事を、意味ありげに思わせぶりに並べただけも、それぞれの話に違った意味合いやニュアンスが生まれるのかもしれません。特にラストでヴァンパイアの話から、再び17世紀の魔女裁判の話へブッツリと切り替わって、魔女として幽閉されていた修道女が美しい再生を遂げて姿を現すシーンは、まるで伯爵が見たかつての幻のようにも思えたりして。
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