エソラゴト

バジュランギおじさんと、小さな迷子のエソラゴトのレビュー・感想・評価

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正直者は馬鹿を……みない!

無類の映画好きな人でも苦手だったり不得手だったりなジャンルはあるものです。自分にとってそんな無理めなジャンルは所謂 "お涙頂戴物"ー。

そういった区分けが正式に存在するかどうかは別として、劇場でかかる予告編だけで「これアカン奴や…」と心身共に拒絶反応を示す作品には勿論自ら進んで劇場に足は運ばないし、仮に友人知人から奢るから一緒に行こうよと言われても頑なに断る自信があります。

…要するに今作は個人的にハナから見向きもしない作品だと勝手に鑑賞前から決めつけていたのです。だってあらすじからして、"底抜けにお人好しな青年と声を出せない迷子の少女の二人旅"ですよ!予告編を観ただけで行くつく先は大体予想出来るし、号泣必至なのは間違いないし…。

それでも観たいと思わせたてくれたのは映画の面白さ楽しさ痛快さをこれでもかと詰め込んでいるインド映画だからこそ。(+巷のレビューの高評価も)

ただインド映画特有の上映時間の長さは近頃加齢による頻尿気味の自分にはとてもシンドイところ(冷汗)。しかしながらそんな事もすっかり忘れてしまう位に、歌や踊り・美しい風景そしてこの青年と娘+熱いオジさんが紡ぐロードムービーに思いっきり引き込まれてしまいました。

また歴史、地理、宗教、慣習やお国柄…娯楽一辺倒でなくそういった社会的視点ももれなく盛り込まれているので、普段使っていない脳を働かせてくれるのも飽きさせない要素の一つなのかもしれません。(そんな中思いを馳せたのは、我が国日本と今現在いがみ合っている海を隔てた隣国との間で今作のような作品は果たして作ることが出来るのだろうか?…ということ)

自分が常日頃我々の住む俗世間に対して心から切望しているのは、"正直者が馬鹿をみる"世の中であって欲しくないという事。嘘、偽り、不正、裏切り、理不尽…などなどが当たり前に横行する世の中に本当の幸福は訪れないと思っています。ただシャヒーダーが何度もアチャーと天を仰ぐ程のパワンの真っ直ぐさは少々度が過ぎていると感じますが(笑)、"嘘も方便"という賢い生き方もあることを改めてこの物語から教えてもらいました。