ネパールの文化、歴史、政治体制などについて、とても勉強になる映画だった。この監督はロングショットの撮り方など才能はあると思うが、映画の運動性には乏しく、生真面目な画面設計が目立ち、これからもっと頑張ってほしい。
主人公の少年の部屋の造形は素晴らしい。壁の配色、ベッドに横たわる少年、そこにフレームインしてくる父親など、この辺りの演出は上手い。
しかし、雄大な大自然、山々、草原、馬、鶏、毛沢東主義者、画面が豊かになる要素は多くあるが、やはり監督は社会的なテーマを語ることと引き換えに映画の運動性を少し放棄してしまった感じはある。
マオイストと行動を共にした姉との再会場面「斜面」の、もうちょっと面白い撮り方もあったのではないか。