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ヤクザと憲法のtetsuのレビュー・感想・評価

ヤクザと憲法(2015年製作の映画)
3.8
東海テレビ最新作公開記念シアターセブンの特集上映にて、ほぼ満席の中、鑑賞。

東海テレビが足を踏み入れたのは"ヤクザの世界"。
「袋に入っているのはマシンガンか何かですか?」と訊ねるTV局員に組員は答える。
「何言ってるんだ、映画の見過ぎだよ。」
これは、私たちが知らない本当のヤクザの姿...。

ヤクザのドキュメンタリーという触れ込みから、実録『アウトレイジ』かと思いきや、そこに写し出されるのは意外にもスーパーに売っていそうな安価な生活着で暮らすヤクザの日常。

二代目清勇会会長・山口さんと山口組の顧問弁護士となった元ヤクザの山之内さんの二人を中心に、「本当のヤクザの姿」と「憲法や法律における彼らの人権問題」が描かれたドキュメンタリーで、「ヤクザ」という言葉に「怖い」というイメージを持っている人にこそ観てほしい作品でした。

僕自身は中学時代、自称ヤクザの息子と名乗る友達がいましたし(←信じるか信じないかはあなた次第w)、「あそこに〇〇組の事務所あるらしいで~」ということを聞くくらいの地元の土地柄(そのため、『アウトレイジ』の撮影地にもなっている。)ではあったので、そこまで「ヤクザ」に対して嫌悪感はなかったのですが、「むしろ、社会がここまで『ヤクザ』の方に厳しいのか...。」ということに衝撃を受けました。

ヤクザに関わっただけで罪の疑いをかけられてしまう弁護士の山之内さんや、国民が受けられる基本的なサービスですら受けられない組員の人々。
その一方で、家宅捜査を強行し、カメラの撮影をも拒む理不尽な警察の姿には、誰しも嫌悪感を抱いてしまうはず...。

もちろん、ドキュメンタリーは現実の見せたい部分だけを切り取るという性質があり、ヤクザの怖い一面や黒い一面は、わずかしか写っていないのが事実なのかもしれません。
しかし、社会に見捨てられ、そこで生きることを決意した組員の方たちの姿や、彼ら同士の義理、そして、上下関係の中での誠実な生き様が捉えられた本作を観た後、僕は、むしろその生き様の方に深く憧れを持ちました。

というわけで、観る人によっては、これまでのヤクザのイメージが大きく変わるかもしれない一作。
報道や雑誌が作り出す世論だけでなく、本作に写し出される実際の映像を観た上で、いまいちど、ヤクザと人権の問題を考えてほしい一作でした。

参考
『さよならテレビ』公開記念 特集上映「東海テレビドキュメンタリーのお年玉」 / シアターセブン
http://www.theater-seven.com/2019/mv_s0163.html
(関西にお住まいの方は是非!)
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