じょにー

アノマリサのじょにーのレビュー・感想・評価

アノマリサ(2015年製作の映画)
4.7
なんだ、これは・・・・・・。

見てこんなに良い気持ちにならない映画なかなかない。おもしろかった。無味無臭無色なのに万華鏡みたいで、どのレビューもそれぞれの方向に純度が高くて素晴らしい。

見た直後はこれで終わり?って思うほど淡白に感じてしまったんだけど、エンドロールで話し声に囲まれながらレビューを読んでると嫌なロマンスにもブラックコメディにもホラーにも思えてきて頭がおかしくなりそうだった。薄氷の下は泥沼だ。

些細な"嫌"を描くのがうますぎる。それが針のかえしのように刺さって、マイケルの主観から自分も抜け出せなくなっていった。雑音に殺されるのは怖い。自分の忌避が冷酷にも同じ強さで跳ね返ってくることが何より恐ろしい。

特別だったものがブラウザのキャッシュのように積み重なる。人生が散乱していく。捨てるのは簡単だけど、育むのは難しい。強い言葉で満たし合うのは簡単なのに、そのままの言葉でそのあとも続いていくのは難しい。強い言葉を簡単に口にしない人が人生のコマを前に進めるんだよな。
やっぱり薄氷の下は泥沼で、きれいな氷を張り続ければ張り続けるほど、沼は深く柔らかくなっていく。
マイケルの不安症設定はなくても良かったんじゃないかと思う。ちょっと明らかに病質的で、ある種の仕方なさというか、主観ののめり込みが遠くなるような感覚があった。けど、これは自分が日本にいるからそう感じたのかも。アメリカなんかはカウンセリングや精神科は日常に近いものと聞いたことがある。

また見たい。次は吹替で。
そのときに自分にどう響くか興味深い、そんな映画。
じょにー

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