KouheiNakamura

ONE PIECE FILM GOLDのKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

ONE PIECE FILM GOLD(2016年製作の映画)
3.0
麦わらの一味と、その限界。

ただ今話題沸騰中の大人気漫画ワンピースの劇場版。今回はエンターテイメントをテーマとして、とにかくド派手で楽しめる作品を目指したそうな。満島ひかり、濱田岳などの豪華声優陣の演技も見もの。4DXで観てきました。まあ〜4D演出はとにかく凄かった。水がブシャブシャ出まくるオープニングは特に凄かったです。

さて。この映画について語る前に、簡単に僕とワンピースについて語らさせていただきます。長くなるかもですが、どうかお付き合いのほどを。
僕がワンピースに出会ったのは、確か中学生ぐらいの頃。ジャンプでやってる海賊漫画が面白い!と聞き、早速単行本を購入。確か当時は7巻ぐらいまで出てました。1巻を読んで、あまりの面白さに一気に最新刊まで購入したことを覚えています。魅力的で個性的なキャラクター、意外性のあるストーリー展開、躍動感のある絵などに魅了されしばらくはワンピースにどハマりしてました。個人的なピークはやはりアラバスタ編。伏線回収の巧みさ、畳み掛けるアクション、毎週続きが楽しみで仕方がなかった。この頃にはテレビアニメも始まり、ゲームに映画化と絶好調。
アラバスタ編以降も丁寧なストーリー展開でワンピースの将来は安泰。…かに見えました。しかし、いつからでしょう。僕はワンピースの展開に違和感を感じるようになったのです。新しい島を旅して、その場所で起こるドラマを紡いでいく…大体そんなパターンで続いてきたワンピース。個人的に違和感を感じ始めたのはスリラーバーク編でした。その頃にはコミックも50巻を超えていましたし、僕も成人してました。まあ、長く続けばマンネリ化もやむなしか。その時はそんなことを考えてました。それからシャボンディ諸島のルーキー達との出会いにはテンションが上がりましたが、世間的な人気のピークだった頂上決戦にはイマイチ乗り切れず。物語は2年後の世界へ…。
正直、2年後になってからのワンピースでワクワクしたことは未だに一度もないです。特に魚人島編は酷かった。今までに比べて圧倒的に華のない悪役たち、無理に人種差別というテーマに挑んだために崩壊したストーリー…。これがあのワンピースかと目を疑わんばかり。心底ガッカリした僕は、今まで集めてきたコミックスを姉に全て譲りました。しかし、今でも最新刊が出ればレンタルで読むぐらいには好きな作品です。


想像以上に長くなってしまいましたが、本題はここから。今回の映画「ONE PIECE FILM GOLD」は、尾田先生自らが映画製作に直接関わるようになってからは三作目。前作のZはZことゼファーを演じる大塚芳忠さんの熱演が印象的な作品でしたが、今回のボスであるギルド・テゾーロも山路和弘さんの熱演によってとても魅力的な悪役になっていました。ただ残念なのは今回テゾーロの過去についてはフラッシュバックであっさり語られるのみであるということ。彼の詳しい過去については入場者特典である777巻に書いてあるのですが…出来ればここは省略してほしくなかったです。
もちろん今回悪役の心情描写を省いたことには明確な意図があります。それは、あくまでも主役はルフィたち麦わら一味であることを強調するため。ぶっちゃけ、今作において闘う理由・闘いにかける想いが強いのは敵であるテゾーロのほうなんです。しかし、ルフィはそんなこと御構い無しに「お前をぶっとばーす!」とやっつけるだけ。良く言えばシンプル、悪く言えば何にも考えてないのが今のルフィなんです。ここを良しとする否かで今回の映画の評価が大きく変わってくると思います。
敵がどこの誰であっても、麦わら一味は決して変わらない。水戸黄門の境地。…ええ、僕がめっきりワンピースにワクワクしなくなった最大の理由がここにあります。

もうはっきり言いますね。最近の麦わらの一味には全く魅力を感じないんです。誰が捕まろうが、ピンチになろうが心底どうでもいいんです。だって、彼らのドラマは既に序盤で語り尽くしてしまったから。既に完成されてしまっている麦わらの一味の冒険にどうやってワクワクすればいいと言うのでしょうか…。


映画が終わって、劇場を出る時に小学生の子供たちが興奮しながら言いました。「スッゲー面白かった!」。
その時、僕は悟ったのです。ワンピースはもう僕たちのものじゃない、彼らのものなんだと…。
KouheiNakamura

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