KouheiNakamura

君の名は。のKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
5.0
星が降った日、奇跡は待たない。


超大ヒット中の新海誠監督最新作。
観終わっての第一声は「ニクい!!」だった。もし劇場を出てロビーに新海誠監督がいたなら、愛のあるいじりをしたくなるぐらいにはニクい作品だったと思う。新海誠監督のドヤ顔が浮かぶシーンの連発。しかし、何故か嫌な気はまったくしない。むしろ、もっとやれ!と言いたくなるほどに痛快で爽快な青春エンターテイメントだ。

実を言うと新海誠監督の作品は秒速5センチメートルを除いて全て見ているのだが、正直そんなに好きな監督ではなかった。美麗な背景には目を惹かれたものの、物語やキャラクターは悪い意味でうじうじと青臭いものが多くいつも煮え切らない気持ちになっていた。いかんせんエネルギーが内向きにしか働かない作家だなあ…というのが新海誠監督に対する僕の雑感だった。
そんな新海誠監督の新作である「君の名は。」。過去作に見られたような青臭さは払拭されていたのか?答えは、否。青臭いメッセージやキャラクターの心情描写はそのままに美麗な映像や動きに磨きをかけ、更にはRADWINPSの音楽が主人公たちを後押しするように鳴り響く…。
短所を修正するのではなく、長所をひたすらに伸ばすスタイル。リアリティやつじつま合わせではなく、エンターテイメントとしてのケレン味や気持ちよさを優先させて一点突破。この映画に感じる爽快さの根源はここにある。愚直なまでに己のスタイルを貫いた監督の大勝利だ。

そしてこの作品はいわゆる色恋沙汰で終わっていない。巧妙に伏線を散りばめたSFミステリーとしての楽しさもある。前半は丁寧すぎるほど丁寧にキャラクターの心情描写を描き、中盤以降のある仕掛けで一気に引き込む。エンターテイメントの王道を行く作りは本当にお見事。

キャラクターたちの生き生きした魅力、RADWINPSの楽曲の瑞々しさなどまだまだ語りつくせないこの作品。見に行かない手はないでしょう。オススメです!
KouheiNakamura

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