イペー

パラドクスのイペーのレビュー・感想・評価

パラドクス(2014年製作の映画)
3.7
異常階段 !

脱出不可能な空間に隠された、驚くべき真実。
メキシコ発、SFスリラー映画。

非常階段に閉じ込められた兄弟と刑事。
荒野から抜け出せない四人家族。
時空の歪みに囚われた二組の人々。
まさに"メキシカン無間地獄"なのであります。

粗製乱造のきらいもあり、ちょっと食傷気味なシチュエーションスリラー。
やや警戒しながらの鑑賞でしたが、思わぬ拾い物でございました。

ネタバレ注意なのであらすじは省略。

本作が秀逸なのは、"ループする空間"のアイデア。
シンプルかつ新しい切り口!
今までにない"密室"を創り出すことに成功しております。

端まで行くと元の地点に戻ってくる。
延々と続く、階段 and 荒野。
兄弟、家族がそれぞれに味わう絶望。
丁寧な演出で雰囲気もグッドです。

序盤から先の読めない展開が続き、中盤で急転直下。
ヘタをすれば物凄くマヌケな印象を与えかねない大胆な場面転換。

そこからのシークエンス、出色の面白シーンの連続!
"退屈"という巨大な敵に精神を蝕まれちゃった登場人物たち。

登ったり降りたり、有り余る物資でオブジェ作ったり、お絵描きしたり、オリジナルの神様を崇め奉ったり、また登ったり降りたり…。

彼らが不条理な日常を逞しくサバイブする姿…笑いと涙が止まりませんでした…。
(※個人の見解です)
だって…袋かぶってんだもの…。

クライマックスで一気に伏線を回収。
こうしたシチュエーションスリラーが陥りやすい、"謎"投げっぱなし放置プレイを回避しているだけでも好感触です。

意外とオチが観念的というか、寓話的というか…綺麗に収束するタイプの作品ではないので、好き嫌いはあるかもしれません。深読みするだけの余白が残されている、とも言えるかな。

特異な状況設定を最大限に活かすべく、構成や演出に工夫を凝らしていて、全く退屈はしませんでした。

アクの強さや雑味の部分が生む、不思議なコク。
どこか癖になる魅力があるのも事実。
巷に溢れる平凡なシチュエーションスリラーだとか、ループものSFなんかに飽きた方にオススメします。

…もし脱出できなくなるなら本屋がいいなぁ。
自分、本を買うのが好きでしてね。
買ってばっかりで全然読んでないんですけどね…。
イペー

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