リッキー

素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店のリッキーのレビュー・感想・評価

4.3
991本目。190329
貴族で大富豪の主人公ヤーコブは、幼いころ父の死がきっかけで喜怒哀楽の感情を失い、つらい日々を過ごしていましたが、ある日、生きづらさから解放されるため「自殺」を決意します。しかしことごとく邪魔が入り決行することができません。
そんな中、ある殺害請負代理店を偶然知ることとなります。この代理店は非合法で運営されていますが、客の要望を取り入れていろいろなプランで実践してくれます。
ヤーコブが契約したのは「いつ・どこで・どのように」亡くなるかわからない「サプライズ契約」です。

ヤーコブはただの大金持ちのバカ息子ではありません。
教養があり、無口だが周りの人々とは必要最低限のコミュニケーションをとることも忘れません。それに自殺を決意した時期も、最愛の母を看取り、葬儀を執り行い、 自分の遺産をある慈善団体に寄付する手配を済ませてからです。

そんな自殺願望が強いヤーコブがある女性と出会うことより、徐々に心の変化が現れます。
この女性も彼と同様、現世には未練がなく生きるべき世界でないと死生観を訴え、二人は共感していきます。死を心待ちにしている想いと、互いに相手のことをもっと知りたくなる想いのパワーバランスが絶妙でした。すでに代理店と正式に契約した二人ですが、契約が施行されるのでしようか。

ヤーコブの住まいは想像を絶するくらいの御屋敷です。正門から住居まで車で移動してもすぐに到達できないくらいの敷地で、そこには数えられないくらいの使用人が働いています。中でも最年長者でこの家の全てを取り仕切っている執事長がこの作品を上品に仕上げてくれています。

本作のタイトル「素敵なサプライズ」ですが、まさにタイトルどおり様々なサプライズがあり、最期まで予想を擬し, どれも素敵な内容です。少なくとも3人の生き方を大きく変えることとなりました。

オランダ映画は初めてでしたが、さすが尊厳死と安楽死の先進国だけあって作品内容にもお国柄がでているように思えました。「安楽死」にはネガティブなイメージがあり、逃避しているように思っていましたが、 これも生き方のひとつの選択ではないだろうかと考えさせられました。
私の中ではかなりの傑作でした。
リッキー

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