じんわりと、心に染みる一作。
40を超えても作家の夢が捨てきれないダメ男、良太。別れた妻と子供には月に一回会えるだけ。家には年老いた母親がいる。そんな彼は探偵業をしながらどうにかこうにか生きている。夢見た人生とは違う今を生きる良太のことを、僕は他人事だとは思えなかった。
ほとんどの人は理想とは違う現実を生きている。でも、それは悪いことじゃない。今を懸命に真っすぐ生きることはとても難しいし、よくさぼっちゃったりもするけれど。いいじゃないか。是枝監督はいつも少しダメな人に優しい。その優しさに、ほんのり救われる。
映画としては、非常に地味な話です。何せ事件といえば台風が来るぐらいしかないですから。映画の大半は生活感溢れる団地での会話場面。でもそれが面白い。何も起きてないように見えて、実は人の心も世界もゆっくり変わっていく。ほんの一瞬のセリフが実は重要だったり、何気ない映像が幸せに満ちていたり。見落としたならまた見返せばいい。そんな是枝監督の余裕のような貫禄すら感じる。
阿部寛さん、真木よう子さん、樹木希林さんの名演を見ているだけでも楽しめる。特に樹木希林さんの可愛らしさは素晴らしかったです。カルピス、食べたいなあ…。
フォアボールでもいいじゃないか。オススメです。
