ふしみあい

ウィッチのふしみあいのレビュー・感想・評価

ウィッチ(2015年製作の映画)
5.0
暗い。暗いところをキチンと暗く見せる、魅せる。暗闇に徐々に目が慣れてくるにつれて浮かぶ、美しい娘の白い肌、兎の眼、魔女のローブ。

一瞬たりとも気の抜けない、大傑作だった。というか怪作!

主人公のアーニャ・テイラー・ジョイちゃんがめちゃめちゃ綺麗。そして少女の持つ危うさと、純潔さゆえのエロさと、まだ幼さの残る頬と、完璧に役にマッチしている。
激昂すると思わず自分でも止められなくなってしまう危うさを孕んだ思春期の少女。後の展開を暗に仄めかしているようだ。

とにかく撮り方がかっこいい。ただの森、ただの木々のはずなのに異常なまでに不気味で、そのカットが出てくるだけで寒気がする。
一家の強い宗教心も気持ちが悪いし、飼ってるヤギの目や、森で出会う兎の目の邪悪さたるや!どうやって表現してるんだろ。

物語の展開も面白く、90分とタイトにまとめられ、本当に集中して見ていた。
特にエロやグロや魔女そのものが出てくるシーンは少ないのに、勝手に想像して、勝手に恐怖に体がこわばる。それはやっぱり、”暗闇”の表現が多用されているからだと思う。人は暗闇を恐れ、いないはずのものを想像し、怖くなり、灯りをつける。それが映画ではできない。そんな当たり前のことを実践した今作は見事にそれが観客に還元されている。

ラストは救いすらも感じさせるものだった。信じてくれない両親に、嫌われている双子兄妹。唯一の味方だった弟の末路。
そして残された選択肢。

ストーリーの面白さ、音のキレキレさ、映像のかっこよさ、そして、これこそが魔女だ!とまで思う、魔女という存在の恐ろしさ。理由もなく蹂躙されることへの恐怖。そして映画全体に流れる貞操観念、宗教観念、魔女の恐怖と相反する妖艶さ。
はー、すごい。これらの要素がごちゃごちゃになることなく、90分という時間でうまく成立している。じわじわ恐怖を高めてくる手法も、堅実で確実。