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パーフェクトマン 完全犯罪のOtoのレビュー・感想・評価

3.9
「盗作モノ」の映画を勉強したくて探してみたら意外となくて、やっと見つけたんだけど、教科書のようなウェルメイド映画だった。

勝海麻衣さん問題から盗作には物語性を感じていたのだけど、盗作の対象ってやっぱり近い人だとバレないほうがおかしいし、ある程度の才能がないとヒットする信憑性が薄いし、「故人」に落ち着きやすいんだな。作家ではなく軍人であるというのも秀逸。

シナリオを分析してWikiにあらすじまで書いてみたけど、やっぱり定石通り。
その中でも、「悩みの時」の隠蔽工作とか、「お楽しみ」の書評と偽って見せるとか、フィナーレの日雇いへの回帰とか、主人公のリアルな行動として描かれながらも、意外性があって面白かった。

マシューがずっと画面の中央にいるカメラワークとかも違和感あって面白かったけど、『透明人間』レベルに到達するのにあと一歩と思うのは映像的な表現の工夫だろうか(あったのは血が降ってくる幻覚くらい?)

性格が抜けすぎと批判されているけどそこが魅力だと思うし、ご都合主義と言われないくらいには主人公に苦難を与えてるし、あえて言えばタイトルが『パーフェクトマン』よりは『理想の男』くらいの方がハードルも下がるしテーマにも合っているし良かったのかも。
あとは終始「緊張」ばかりでハラハラするけど辛くなりすぎるから、お楽しみとかでもう少し無双パート(幼なじみから認められるとか水上ボートでプロポーズするとか)があるとなお良かったと思うけど、よくできた映画でおすすめです。


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プロット分析

・起:「小説家を目指す男マシューは、出版社に自作を持ち込むが全く相手にされない。運搬のバイト中に入った大学で講義をしている文学研究者のアリスに一目惚れをするが、到底手の届く存在ではない。ある日、バイト先でたまたま片付けに入った故人の家で、とある軍人が残した日記を発見し、強烈な感銘を受ける。筆が進まないストレスで、自らの著作に改竄して『黒い砂』として出版社に送ると、掌を返すように絶賛され契約を持ちかけられる。用意周到な彼は、戦争史の勉強やインタビューの準備など、隠蔽工作を完了したのちに出版すると、たちまちベストセラーとなり人気作家となる。」

①OP:追い詰められた男(実はクライマックス)
②テーマ:『陰の男』「文体は常に過去形です(香りの影響でしょう、香りは罪深い)」
③セットアップ(欠点):バイト中でさえも過集中で周りが見えない、落選通知を修正液で変える、文才がない、お金がない、諦めが悪い
④きっかけ:日記を盗作する
⑤悩み:出版社からの契約を延期し、戦争の勉強、インタビューの準備、原稿を燃やす、など隠蔽工作をする
⑥1st:インタビュー会場で作家と気づかれなかった相手にアプローチ

・承:「3年後、憧れだったアリスとも恋仲となり、彼女の別荘で理想的な暮らしを送るマシューだが、次の原稿がいまだに書けていないことに悩む。借金もかさんで破産寸前となり、焦ったマシューは、自身の過去の著作を他人の書評と偽って彼女に見せるが、「出版できる出来ではない」と酷評される。締め切りを遅らせるために、事故に遭ったふりすらも行う。しかし、亡くなった軍人を知っているという男がマシューのサイン会に現れ、彼を脅して金品を求めるが、金のないマシューは代わりに彼女の父親の家宝である銃を売ろうと盗み出す。」

・転:「しかし、同じ家に住む彼女の幼なじみのスタンに見つかってしまったことで、勢い余って殺してしまい、隠蔽工作をして海に沈める。脅す男からの要求はエスカレートする中、妊娠したアリスには嘘を突き通すが、ついに自らに才能がないことを認め、「アリスのために執筆をしてきたため、お前のことだけは失いたくない」と告げる。そして、自身のこれまでの経験を『偽物』という物語として執筆することに決める。」

⑦サブ:彼女の別荘で暮らすと、彼女の幼なじみがいる
⑧お楽しみ:執筆が進まず借金で破産寸前だが、過去の著作は酷評、幼なじみからは怪しまれるが、彼女は自分にベタ惚れ
⑨MP:サイン会で脅され、家にも電話が来るため、追い詰められて義父の銃を盗むが、幼なじみにバレて誤って殺してしまう
⑩悪:苦戦しながらも死体を遺棄。脅す男の要求はエスカレート
11)ボトム:妊娠した彼女に浮気を疑われ、本心を告白
12)暗闇:自らの経験を物語にして執筆
13)2nd:警察の手が忍び寄り、自暴自棄になるが死ねず(OP)

・結:「スタンの遺体が見つかったことで、一家のDNA検査が行われることとなり、観念したマシューは書き上げた小説を彼女に渡し、自分を脅す男を騙して殺す。男を燃やしてすり替わり、自分が死んだことにして暮らすことに決める。2年後、素性を隠すために、再び日雇い労働者として暮らすマシューは、自身が書いた2作目のヒットと、自分の存在に気づかない妻子を背に、街へと消えていく。完全犯罪を成功させた男は、ヒット作と引き換えに、全てを失ったのだ。」

14)Fin:彼女に自らの著作を委ねて、男を殺す。すり替わって日雇いバイトをする
15)ED:2作目のヒットと妻子を背に、街へと消える
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