まぐ

シング・ストリート 未来へのうたのまぐのレビュー・感想・評価

4.1
青春の閉塞感と、それをぶち抜く恋、夢、仲間、そして音楽。全てが同居しているのに、シンプルで真っ直ぐな青春映画。
青春時代、何かを恐れて何かから逃げて来た人間にとっては、過去という幽霊を成仏させる鎮魂歌にすら感じる。


※まだ見てない人は、是非このレビューも予告編も何も見ずにTSUTAYAで借りて来てほしいです。話が真っ直ぐすぎて、予告編を見ることで展開を完全に予想できてしまいます。


誰でも言っているが、音楽が本当にいい。
劇中の作品としての曲ももちろん、挟まれる劇伴も大きく感情を揺さぶる。伏線や演出の意図がわかるような歌詞も、この映画に絶対必要な要素だ。主人公が書いたという設定の歌詞は、常に主人公の現在の状態を知る手掛かりになっている。

キャラも凄くいい。特にバンドメンバーの。一度見たら忘れられない顔のヤツ、「あー、いるいる」となる性格にクセのあるヤツ、なぜか2人で1セットのヤツら。エイモン以外は出番も少ないのに、久々に画面に出て来ても誰だ?とならない。
弟への激しい嫉妬とそれ以上の愛を持つナイスな兄貴は一番人間味のあるキャラかもしれない。ラフィーナが出る画面はとにかく美しくなるし、誰もが認める美女像とは少しズレているのもいい。顔だけでない、雰囲気を併せ持つ女優だと思う。

ただ、この映画はとにかく壁が脆い。お高く止まった女も、いじめっ子も、教師も、猛威を振るう前に倒されてしまう。テンポの犠牲となった部分かもしれないが、これをしっかり描かないと万人には本当の意味では共感されないと思う。青春時代に主人公と似たような立ち位置だった人間が自分の記憶と重ね合わす事でのみ完成しているような気がして、そこだけが残念だ。

とはいえ、自分にとっては凄くいい映画体験だったことには変わりない。今なら青春に戻っても、逃げてきたものに立ち向かえる気がする。
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