エソラゴト

グリーンルームのエソラゴトのレビュー・感想・評価

グリーンルーム(2015年製作の映画)
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お呼びでないパンクロッカー達によるネオナチ集団への過激な挑発を発端とする一大騒動かと思いきや、完全にとばっちり系巻き込まれ型のシチュエーションスリラー+バイオレンス映画でした…。

この2組の対立構造で高度な頭脳戦を期待するのは酷な話なのですが、予想通り行き当たりばったりのせめぎ合いに終始。多勢に無勢、飛び道具も持たぬパンクス達の圧倒的不利な状況下で如何にして形勢を逆転してこの狭いグリーンルーム(楽屋)から脱出するのでしょう?

ノープランの為、何度もこの部屋から出ては戻ってくるの繰り返しは恐怖よりも笑いが込み上げてしまいました。ただ、もし自分が同じ状況に遭遇したら直ちにパニックに陥り一番最初に始末されるキャラとの自覚はあるので心の底から笑えない自分もいました。

ちょっと前に鑑賞した『ドント・ブリーズ』同様、生死をめぐる最終的な攻防はアメリカ社会の象徴ともいえる代物の奪い合いに集約されてしまうのは致し方ないとはいえ、襲いかかってくる獰猛な犬の戦意喪失法や娯楽施設には必ず常備されている身近な物の使い方など舞台であるライブハウスの特性を活かした演出は奇抜で楽しめました。だからこそ舞台設定を有効活用した鍔迫り合いをもっと観たかったのは素直な感想。

とはいえ、死を予感し過去の回想から脱出のヒントを手繰り寄せるくだりと意を決した直後の主人公達の変貌した姿には自然と気分は高揚しました。

絶望的な危機的状況を打破する最強にして最高の武器は銃やナイフではないことを痛感。これを手にしたものは無敵であり怖いものなし。困難な実社会を生き抜く最も有効な処世術をこういった作品から改めて教えてもらうとは思いも寄りませんでした。