so

聖の青春のsoのレビュー・感想・評価

聖の青春(2016年製作の映画)
3.5
将棋でも囲碁でもチェスでも、誰もが思いつかない一手を指すような天才というのは大体人間として癖がありすぎる変人であることが多い。
本作で描かれる29歳で夭折した鬼才棋士、村山聖も御多分に洩れず、相当な曲者だ。
しかし、彼の異常なまでに勝利に執着し、自分にも他人にも妥協を許そうとしない性格も、少女漫画を貪るように読む変わった好みも、全ては彼が幼い頃に発症した病気によって形成されていったものなのだと思う。
死に取り憑かれ、片時も死から逃れることのできない彼の言動には、滑稽と狂気の境目がない。
病状が悪化していくなかで、唯一のライバルである羽生と初めて二人きりで話すシーンは将棋を指すシーン以上に胸に迫ってくるものがある。「女を抱きたかった」としみじみ語る村山と、「死ぬほど悔しかった」と噛みしめるように本気で嘆く羽生。ただのライバルを超えて、もちろん友情でもなく、もはや互いに生きる上での理由でもあるような、凄まじい関係を見るような気がした。

ここまでしなくてもいいんじゃないかと思うほどに本人に近づけるために太った松山ケンイチには気迫を感じるし、東出昌大は誰もが知る羽生のキャラクターを見事に演じきっている。

自分の中にある「将棋やチェスの映画は間違いない説」は今回も打ち破られなかった。
so

so